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借金問題解決コラム

更新日:2023年5月13日

個人再生の弁済期間

このコラムを書いた弁護士
弁護士 羽賀 倫樹(はが ともき)

大阪生まれの奈良育ち。夏の高校野球観戦が楽しみです。お互いのことを何一つ知らないご依頼者と弁護士が、少しずつ距離を縮めながら、人生の一大事の解決に向かうわけですから、ていねいにお話しをうかがって心を開いていただくことの大切さを痛感しています。

はじめに

個人再生は、借金を圧縮して、無利息で長期分割する手続きですが、分割期間は、原則として3年とされています(民事再生法229条2項2号、244条)。ただし、「特別の事情」がある場合、最長5年までの分割が認められます。そこで、どのような場合に特別の事情が認められるかが問題になります(①)。また、弁済期間に関連して、少額債権の場合も3年かけて支払わないといけないか(②)、収支に余裕がある場合に、3年より短い弁済期間の設定は認められるか(③)、弁済期間中に繰り上げ弁済が認められるか(④)の点が問題なります。

本ページでは、個人再生の弁済期間に関わる以上の①~④の問題点について見ていきます。

弁済期間の伸長が認められる「特別の事情」について

個人再生では、弁済期間は原則3年ですが、「特別の事情」がある場合、最長5年までの弁済期間が認められます(民事再生法229条2項2号、244条)。この点、「特別の事情」は以下の要件を満たす場合に認められると考えられています。

 

特別の事情は、比較的広く認められていますが、3年でも支払いが可能であるものの、余裕をもって4年または5年にしたいという場合は認められません。また、ボーナスがある場合は、ボーナスからの返済を考慮しても3年での支払いができないことが必要です。

少額債権の場合も3年かけて支払わないといけないか

個人再生では、借金を例えば5分の1に圧縮して、3年分割で支払っていくことになります。そのため、もともとの借金の額によっては圧縮後の金額が小さく、3年分割となると1回あたりの返済額が極めて少額になることもあります。場合によっては返済額より振込手数料の方が高くなったり、そうでなくても返済額と比較して振込手数料の負担が重いという事態が発生することが考えられます。

 

この点、このような事態を避けるため、民事再生法では、少額債権について1回あたりの弁済額を他より高くして、早期に完済することが認められています(民事再生法229条1項)。この規定は、少額債権者に対し早期の弁済を受けられるという利益を与えるもので、債権者間の不平等を生むものになります。しかし、もともとの金額が小さく、早期の弁済を受けられる利益も事実上無視しうる程度にとどまることや、上記の通り返済時の振込手数料の負担を回避する必要性があることから、許容されています。

 

どのような場合に少額債権として認められるかですが、大阪地裁では、1か月あたりの返済額が1,000円以下になる場合に、少額債権として短期間の弁済が認められます。具体的には、弁済期間が3年であれば、圧縮後の金額が36,000円以下である場合、弁済期間が5年であれば、圧縮後の金額が60,000円以下である場合、少額債権として短期間の弁済が認められます。

収支に余裕がある場合に、3年より短い弁済期間の設定は認められるか

収支に余裕がある場合には、早く完済するために3年より短い弁済期間を定めたいと考えるケースがあると思います。

この点、民事再生法229条2項2号は、個人再生における最終の弁済期について、「再生計画認可の決定の確定の日から3年後の日が属する月中の日」と定めています。そのため、収支に余裕があっても、3年未満の弁済期間とすることは認められません。

3年より短い弁済期間が認められるとすると、債権者から短期間で返済してほしいとの圧力がかかり、無理な弁済期間を定めることになりかねないことから、このような取り扱いになっています。

弁済期間中に繰り上げ弁済が認められるか

(1)全ての債権者に対し繰り上げ一括弁済することの可否

一旦弁済期間を決めた後、収支に余裕ができた場合には、繰り上げ弁済をしたいと考えるケースがあると思います。この点、3年より短い弁済期間の設定は認められませんが、一旦3年の弁済期間を確保すれば、債権者から短期弁済の圧力がかかる恐れはありません。また、債権者にとっては、繰り上げ弁済によって不利益が生じることもありません。そのため、弁済期間中に繰り上げ弁済をすることは認められます。

(2)一部の債権者だけ繰り上げ弁済することの可否

一方、一部の債権者だけ繰り上げ弁済することは、民事再生法229条1項が債権者間の平等を定めていることから、問題となります。実質的に見ても、繰り上げ弁済を受けた債権者だけが、本来の弁済期までの利息相当額の利益を得て、また、債務者の将来の無資力のリスクを負わなくて済むという問題があります。

仮に一部の債権者だけ繰り上げ弁済した後に、支払いが困難になり破産に至った場合、繰り上げ弁済が偏頗弁済にあたるとして、免責が認められない恐れがあります(破産法252条1項3号)。そのため、一部の債権者だけ繰り上げ弁済をすることは避けるべきで、収支に余裕ができた時は、全ての債権者に対して平等に繰り上げ弁済をする必要があります。

弁護士によるまとめ

弁済期間に関わるの①~④の問題点に対する回答は、以下の通りとなります。

① 最長5年までの弁済期間が認められる特別の事情とは?
→ 3年分割では余剰が足りない一方、4年・5年分割であれば余剰が足り、4年・5年の間収入が安定して支払いが可能と見込まれること

② 少額債権の場合も3年かけて支払わないといけないか?
→ 少額債権は3年未満の弁済が認められる。

③ 収支に余裕がある場合に、3年より短い弁済期間の設定は認められるか?
→ 認められない

④ 弁済期間中に繰り上げ弁済が認められるか
→ すべての債権者に対し平等に繰り上げ弁済することは認められる
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