大阪生まれの奈良育ち。夏の高校野球観戦が楽しみです。お互いのことを何一つ知らないご依頼者と弁護士が、少しずつ距離を縮めながら、人生の一大事の解決に向かうわけですから、ていねいにお話しをうかがって心を開いていただくことの大切さを痛感しています。
個人再生における個人再生委員
はじめに
個人再生には、個人再生委員という制度があります。
個人再生委員がどのようなものであるかですが、民事再生法に条文があります。具体的には、個人再生の申立をした場合に、裁判所において必要があると判断するときは、個人再生委員が選任されます(民事再生法223条1項前段)。また、再生の対象となる債権の評価額に争いがあり、再生債権の評価の申立がされた場合にも個人再生委員が選任されます(民事再生法223条1項後段、227条1項本文)。個人再生委員には、申立代理人弁護士とは別の弁護士が選任されます。
ここでは、個人再生委員が具体的にどのような場合に選任されるか、選任された場合に手続きにどのような影響があるか等について見ていきます。
個人再生委員が選任される場合(財産収入の調査等)
個人再生委員の職務として、再生債務者の財産及び収入の状況を調査すること、再生債務者が適正な再生計画案を作成するために必要な勧告をすることというものがあります(民事再生法223条2項1号・3号)。
そのため、上記の調査や勧告の必要がある場合に個人再生委員が選任されることになります。より具体的には、大阪地裁では、個人事業主で、負債総額から住宅資金貸付債権(住宅ローン)・保証債務を除いた金額が3000万円以上である場合、個人再生委員が選任されます。個人事業主で、個人としては大きな負債がある場合、取引関係が複雑であったり、大きな財産・収入があることが考えられるため、慎重な調査が必要になること、適正な再生計画案を作成できるか問題が生じやすいことが理由と考えられます。
上記の要件に当てはまらない場合、大阪地裁では、原則として個人再生委員を選任しない運用になっています。ただし、以下のようなケースでは個人再生委員が選任されることがあります。
個人再生委員が選任されるケース |
再生する人が弁護士に手続きを依頼しない、本人申立の場合 |
収支が不明確であったり、積立を切り崩したりするなど、履行可能性の判断が複雑である場合、または、履行可能性に問題がある場合 |
申立書や申立時の資料が不十分である場合 |
住宅ローン特則を利用するケースで、諸費用ローンが住宅の買替前債務が混在している等の事情のため、住宅資金貸付債権該当性が問題になる場合 |
否認対象行為の成否の判断や、財産価値の評価について慎重に判断する必要がある場合 |
一方、東京地裁では、全件個人再生委員が選任されており、大阪地裁とは運用が大幅に異なっています。
個人再生委員が選任される場合(再生債権の評価)
個人再生委員の職務として、再生債権の評価に関し裁判所を補助することというものがあります(民事再生法223条2項2号)。債権者が届け出た再生債権について、再生債務者(個人再生を申し立てた人)が異議を出し、さらに債権者が再生債権の評価の申立をしたケースでは、必ず個人再生委員が選任されます(民事再生法223条1項後段、227条1項本文)。
再生債権の評価の申立がされるケースは、①貸金業者との間で取引の一連性について争いがあり、一連であるか分断であるかで債権額が変わってくるケース、②貸金に関する契約書が存在しないケース、③別除権付再生債権について、担保目的物の評価額に争いがあるケース等が考えられます。ただし、実際には再生債権の評価申立がなされるケースは非常に少なく、評価申立が理由で個人再生委員が選任されるケースもほとんどないのが実態です。
個人再生委員が選任された場合の手続きへの影響
再生債務者の財産及び収入の状況を調査するため、または、再生債務者が適正な再生計画案を作成するために必要な勧告をするために個人再生委員が選任された場合、個人再生をする人にとって手続き的に大きな影響があります。
具体的には、個人再生委員に支払う費用として、大阪地裁では30万円が必要になります。また、再生手続きを弁護士に依頼している場合、個人再生委員が選任されることで追加の費用が必要になることがあります。借金の支払が苦しくて個人再生を申し立てていることを考えると、この費用負担は軽いものではないと言えるでしょう。
また、個人再生委員が選任された場合、個人再生委員の事務所での面談が必要になります。何らかの問題があって個人再生委員が選任されているため、通常より詳細な説明・資料提出が必要になることがよくあります。この手続き負担も小さくはありません。
個人再生委員に関する東京地裁と大阪地裁の運用状況
すでに記載した通り、個人再生委員の運用は、東京地裁と大阪地裁で大きく異なり、東京地裁は全件選任されますが、大阪地裁では例外的な場合にだけ選任されます。個人再生委員が選任されると手続き負担・経済的負担が重くなりますので、大阪地裁の方が全般的に個人再生申立の負担が軽いと言えます。そのため、大阪は東京と比較して個人再生申立てを選択しやすい状況であると言えるでしょう。
また、大阪以外の関西圏(兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県)は、大阪地裁と運用が全く同じというわけではありませんが、個人再生委員が選任されるのは例外的なケースに限られています。そのため、関西圏では、東京と比較して個人再生申立てを選択しやすい状況であると言えます。
都道府県 | 個人再生委員の地域による運用の違い |
東京都 | 全件選任される |
大阪府 | 例外的な場合にだけ選任される |
兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県 | 個人再生委員が選任されるのは例外的なケースに限られている(大阪地裁と運用が全く同じではない) |
弁護士によるまとめ
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