大阪生まれの奈良育ち。夏の高校野球観戦が楽しみです。お互いのことを何一つ知らないご依頼者と弁護士が、少しずつ距離を縮めながら、人生の一大事の解決に向かうわけですから、ていねいにお話しをうかがって心を開いていただくことの大切さを痛感しています。
会社員と個人再生
はじめに
個人再生は、会社員等の給与所得者・公務員・個人事業主・会社役員・年金生活・兼業主婦等様々な職業の方が利用されますが、職業別に注意すべき点が異なります。このページでは、会社員が個人再生する場合の留意点や特徴について見ていきます。
会社員が個人再生をする場合の留意点や特徴の概要
会社員が個人再生をする場合の留意点や特徴には以下のようなものがあります。
⑴ 収入面
・ 収入は安定していると判断されやすい
・ 定年が近い場合は収入の安定性に問題があると判断されることがある
・ 給与差押えの恐れがある
・ 給与振込口座を変更しないといけないケースがある
⑵ 財産面
・ 退職金が出ることがある
・ 社内積立・財形貯蓄・従業員持株会の制度を利用していることがある
・ 会社を通じて様々な保険に加入していることがある
⑶ 負債面
・ 勤務先や組合から借入をしていることがある
・ 税金・社会保険料等は問題になることが少ない
ここからは、以上の留意点や特徴の詳細について見ていきます。
留意点や特徴の詳細
収入は安定していると判断されやすい
個人再生は、「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み」があることが要件の一つになっています(民事再生法221条1項、小規模個人再生)。また、給与所得者等再生を利用する場合は、上記要件に加え、「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれる」ことも要件になります(民事再生法239条1項)。
収入の安定性は個人再生利用の際の重要な要件です。この点、会社員の場合、基本的に毎月一定額の給与が支払われますので、多くの場合上記の要件をクリアできます。そのため、会社員は、個人事業主と比較して個人再生を利用しやすいと言えます。
歩合給や残業代が給与の相当部分を占める場合、収入の安定性に問題が生じることがありますが、毎月の収入の変動が大きくても、少なくとも3か月に1回の弁済が可能な程度の収入があれば、上記要件を満たすと考えられます。
また、給与所得者といってもアルバイトや派遣社員の場合、収入の安定性の問題が生じることがあります。しかし、相当期間雇用や派遣が続いているのであれば、要件を満たすと考えられますし、現に、相当期間同じ仕事を継続している方について個人再生が認められている事例は多くあります。
定年が近い場合は収入の安定性に問題があると判断されることがある
会社員特有の問題として、定年が近い50才代後半位の方について、定年で収入が大きく下がり、収入の安定性に問題があると指摘されることがあります。
この点は、収入が下がっても十分な余剰があり支払いが可能であるとか、退職金が入ってきてそこからの支払が可能であるなどの事情を説明して、収入の安定性の問題をクリアすることが考えられます。
給与差押えの恐れがある
会社員は借入先に勤務先を申告していることがあり、個人再生の手続きが長引くと債権者から裁判を起こされ、給与を差し押さえられる恐れがあります。
個人事業主ではあまり発生しない問題点であり、給与差押えの恐れがある場合には、手続きをテンポよく進める必要性がより高くなります。
給与振込口座を変更しないといけないケースがある
銀行や信用金庫から借入があり、その金融機関に預金口座もある場合、個人再生の手続きを行うと預金口座が凍結されてしまいます。給与振込口座も同じ口座である場合、口座凍結により給与の受け取りができなくなる可能性があります。そのため、このようなケースでは給与振込口座を変更する必要があります。
退職金が出ることがある
勤務先によっては退職金制度が存在することがあり、退職金がある場合は財産として計上する必要があります。具体的には、正社員として5年以上勤務している方について、自己都合退職した際の退職金の8分の1が財産となります。定年間近で退職が近い場合は、退職金の4分の1を財産計上しないといけないこともあります。
このように、会社員の場合、退職金の調査が必要になるケースがあることと、退職金の額によっては、再生後の支払額が大きくなることに留意が必要です。
社内積立・財形貯蓄・従業員持株会の制度を利用していることがある
勤務先によっては、社内積立・財形貯蓄・従業員持株会等の制度があります。その制度を利用している場合、残高について財産計上する必要があります。
会社を通じて様々な保険に加入していることがある
保険の中には、勤務先を通じて加入すると保険料の団体割引が適用されるものがあります。そのため、会社員の方の場合、勤務を通じて保険に加入されていることがあります。このような保険も解約返戻金を確認して、財産として計上する必要があります。
勤務先や組合から借入をしていることがある
会社員の方は、勤務先や組合から借入をしていることがあります。個人再生の場合、全ての債権者を対象として手続きをする必要がありますので、勤務先や組合からの借入であっても圧縮の対象にする必要があります。
勤務先が大きな会社の場合、借入を圧縮しても大きな問題にはなりにくいかもしれませんが、勤務先が小さな会社の場合、勤務先にいづらくなるなどの問題が生じるかもしれないため、注意が必要です。
税金・社会保険料等は問題になることが少ない
会社員の税金・社会保険料は、ほとんどが給与から天引きされており、税金・社会保険料等の滞納が問題になることはあまりありません。
ただし、会社員であっても、不動産や自動車を所有している場合は、固定資産税や自動車税の滞納が問題になることがあります。税金等の滞納がある場合、行政庁と支払方法の協議をして、裁判所に対し、滞納税金を支払ったとしても再生における弁済に問題がないことを示す必要があります。
なお、会社員の方で固定資産税や自動車税の滞納がある場合は、経済状態が相当悪化しており、個人再生が難しいケースが多いと感じることがあります。税金等は優先的に支払いをすることが多く、その部分に滞納が生じるのは収支が相当悪い状態になっていることが多いためと思われます。
公務員の場合
公務員は、会社員と同じ給与所得者のため、個人再生における留意点や特徴はほぼ同じです。収入の安定性は、一般的に会社員より高いと思われるため、より個人再生が利用しやすいと言えます。
公務員の場合は、実際の勤務先にもよりますが、様々な財産状況や資料収集の進め方などについて、上場企業などの大規模な会社に勤務されている方と類似するケースが多いように思います。
弁護士によるまとめ
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