コラム

1 弁護士は破産・廃業のご相談で決算書のココを読む!

中小企業の経営者にとって、もっとも困難な決断が、「弁護士に破産・廃業の相談をするタイミング」です。経営者の中には、資金ショートに至るまで弁護士への相談をためらう方もいらっしゃいますが、このタイミングで初めて弁護士に相談しても、破産手続に必要な費用を捻出できず、「きれいに会社をたたむ」ことができないおそれがあります。

弁護士に破産・廃業の相談をするタイミングを見極めるために有効な資料の1つが、決算書です。決算書は、会社の状態を知るための「健康診断書」です。「何となく危なそう」「最近苦しい感じがする」といった感覚ではなく、客観的な数字データに基づいて会社の状態を把握することで、的確に、弁護士に破産・廃業の相談をすべきタイミングを見極めることができます。

2 破産・廃業の黄信号を見抜く (1) – 貸借対照表の読み方

破産・廃業のご相談で弁護士が注目する書類の1つが、「貸借対照表」です。「貸借対照表」には、その会社に今どのくらいの資産があり、どれくらいの債務を抱えていて、どれくらいの余力があるかが示されています。

弁護士の立場からは、次のようなポイントに着目しながら、破産をせずに経営を継続することが可能な状況にあるかを検討します。貸借対照表については、直近1年分だけではなく、数年分の推移を見ることで、より詳しい分析ができます。

(1) 債務超過に陥るおそれはないか

たとえ債務超過に至っていなくても、それに近い状況にあれば、将来的に破産を余儀なくされるおそれがあります。このような場合は、コストを削減する方法を考えたり、不採算事業の廃止・縮小を進めるなど、短期で経営改善を進める必要があります。

(2) 流動比率(特に、当座比率)が低すぎないか

・流動比率=流動資産÷流動負債

・当座比率=(現預金・受取手形・売掛金・有価証券)÷流動負債

流動資産は、一般に、1年以内に現金化ができる資産をいいます。他方、流動負債は、一般に、1年以内に支払わなければならない債務(買掛金や短期借入金)をいいます。

流動比率、特に、当座比率が低い状態になっていると、短期間のうちに資金ショートの危機が生じて、経営が立ちゆかなくなるおそれがあります。

流動比率、特に当座比率が低い場合は、早期にリスケジュールや借換えの相談をして、改善を試みる必要があります。

(3) 負債比率が大きすぎないか

・負債比率=負債総額÷自己資本

負債比率が大きすぎることは、返済の負担が大きく、経営状態が厳しいことを示す指標の1つです。負債比率が大きいことが直ちに資金ショートにつながるわけではありませんが、改善を試みなければ、そのまま資金ショートの道をたどるケースが多いです。

負債比率が大きすぎると、金融機関から新規の融資が受けられなかったり、経営が厳しくてもリスケジュールを断られたりと、経営を続けるうえで様々な問題を生じさせます。

負債比率を下げる方法として、業務で使用する頻度の少ない資産を売却して返済に充てたり、仕入れを削減したり、全体的なコストの見直しを試みたりすることが挙げられます。

3 破産・廃業の黄信号を見抜く (2) – 損益計算書の読み方

破産・廃業のご相談で弁護士が注目するもう1つの書類が、「損益計算書」です。「損益計算書」は、会社の売上げやコストを詳しく把握することができますので、経営状態を改善する道を探るための大きなヒントになります。

(1) 当期純利益のマイナスが続いていないか

当期純利益のマイナスが続いている、つまり、赤字が続いている場合は、近い将来に経営が立ちゆかなくなるおそれがあります。

そのような場合は、当期純利益がマイナスになっている原因を分析し、改善策を検討する必要があります。

損益計算書をチェックするときに、当期純利益がマイナスかプラスかばかりに目が行きがちです。ただ、当期純利益はあくまでも「結果」であって、むしろ大切なのは、当期純利益がマイナスになった要因を見極めることです。

(2) 安全余裕率が低い状態が続いていないか

・安全余裕率=(実際の売上高-損益分岐点売上高)÷実際の売上高

・損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費÷売上高)

固定費とは、労務費や減価償却費、不動産賃借料など、売上高の変化によって金額が変わらないコストのことです。他方、変動費とは、原材料費や外注加工費、工場電力料、販売手数料など、売上高の変化によって増減するコストのことです。

安全余裕率が0に近い状態が続いている場合、あるいは、0未満となった年度がある場合は、経営状態がすでに厳しいか、近い将来厳しい状態になることが見込まれます。

安全余裕率を上げるために、まずは、固定費を削減する方法を考えることが重要です。例えば、働き方改革による人件費の見直しや、事務所の移転による家賃の削減など、固定費の見直しによって、安全余裕率を上げることができます。

あわせて、変動費を下げる努力の重要です。配送会社の変更や在庫管理方法の見直しなど、コストダウンを積み上げることが、安全余裕率の改善につながります。

長期的には、ブランド力を高めるための商品・サービス開発や、顧客満足度を高めるための経営努力などで、売上高を伸ばすことも重要です。

安全余裕率の推移を比較することで、経営状態が改善に向かっているか、悪化の一途をたどっているかを客観的に分析することができます。

(3) 支払い利息が大きすぎないか

売上高に問題はなく、コスト削減の努力をしているにもかかわらず、返済の負担が大きいために経営がひっ迫しているケースがあります。このようなケースに該当するかどうかは、支払利息の負担を確認することで、ある程度分かります。

例えば、損益計算書の推移を確認して、支払利息の額が段階的に増えている場合は、返済の負担が経営悪化に直結していることが疑われます。

このようなケースでは、リスケジュールや借り換えによって、少しでも返済による負担を減らす方法を考える必要があります。

4 破産・廃業の黄信号を見抜く (3) – 決算書では分からないこと

ここで、貸借対照表と損益計算書を分析して、弁護士の立場から破産・廃業の検討をおすすめするかどうかを見極めるポイントをお伝えしました。もっとも、実際のご相談では、決算書の内容だけではなく、経営者からご事情をうかがって、「決算書では分からない事情」まで検討対象にすることが多いです。例えば、次のような事情は、決算書では把握できません。

(1) 経営改善の見込みがどれくらいあるか

貸借対照表や損益計算書から把握できることは、あくまでも、これまでの経営改善の努力がどれくらい実っているかです。将来的に、経営改善の努力がいつ頃から軌道に乗り始めるか、どの程度の利益につながるかは、その業界で長年の経験をされた方でしか分からないことです。

私たち弁護士は、貸借対照表や損益計算書の数字だけで破産・廃業の必要性を判断するわけではなく、経営者の方がこれまでどのような努力をされてきたか、それが業界内でどのような意味のあることかを丁寧にうかがって、経営改善の見込みを検討します。

(2) 債務の返済がどれくらい厳しい状況か

貸借対照表の推移を見たり、損益計算書で支払利息の額を確認したりすることで、債務の返済がどれくらい負担になっているか、ある程度予想することはできます。ただ、実際に日々の資金繰りはどのような状況にあるか、そして、今後の資金繰りはどうなると考えられるかは、日頃から試算表で入出金を確認し、現実に返済原資の確保に奔走している経営者の方しか分からないことが多々あります。

私たち弁護士は、貸借対照表や損益計算書の数字だけにとらわれず、経営者が今どれほど返済原資の確保についてお悩みを抱えているかを丁寧にうかがって、経営継続の可能性を見極めます。

(3) 事業を残し続ける価値はどれくらいあるか

「事業」には、数え切れないほどの種類があり、まさに「十人十色」です。失敗する可能性も念頭にスタートしたベンチャー事業から、何百年も続く伝統事業まで、様々なものがあります。その「事業」を後世に残していくことにどれほどの価値があるかは、その業界に精通した経営者しか分かりません。

私たち弁護士は、経営者とお話しをしながら、その「事業」にどのような価値があって、今後も存続させることにどのような社会的意義があるかを考えるように心がけています。

5 会社・法人の破産・廃業を決断すべきかを迷っている経営者へ

「破産・廃業を考えるべきか」を迷っている経営者の方には、弁護士の法律相談をおすすめします。私たち弁護士は、経営に関する様々な事情をうかがって、事業継続の選択肢も念頭に最善の選択肢をご提案いたします。お困りの際は、ぜひ私たち弁護士法人みおの弁護士にご相談ください。

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