コラム

2025.09.30

建設会社の代表者の方へ:破産を考えたときに知っておきたいこと

~建設業経営者が抱える不安にお答えします~

「もう会社が持たない」「借金が返せない」「従業員の給料が払えない」…建設業を営む代表者の方から、このようなご相談を受けることが増えています。

破産なんて考えたくもない。でも現実問題として、どうにもならない状況に追い込まれたとき、一体何が起こるのか、家族はどうなるのか、従業員はどうなるのか…不安で眠れない夜を過ごしている経営者の方も多いのではないでしょうか。

法律の難しい話は抜きにして、実際に皆様が心配されていることを中心に、できるだけわかりやすくお話しします。

1. 破産手続きって実際どんな流れで進むの?

申立ての準備段階で何をするの?

まず弁護士と一緒に裁判所に破産手続開始の申立てを行います。このとき多くの経営者の方が心配されるのが「経理資料がきちんと揃っていない」「帳簿がぐちゃぐちゃになっている」ということです。

でも大丈夫です。経理資料等の原資料が不足している場合でも、弁護士が経理担当者や代表者から聴取した内容に基づいて申立書類を作成し、資料が不備である旨の上申書を添付すれば申立てができます。「資料が完璧でないと申立てできない」ということはありません。

弁護士費用・予納金はどうやって用意する?

申立てには、弁護士費用や予納金が必要です。

「そんなお金があるなら破産なんてしない」と言われる方が多いのですが、これは破産管財人の費用として使われる、手続きを進めるために絶対に必要なお金です。多くの方が生命保険の解約返戻金や親族からの援助で工面されています。

予納金が納付されると、裁判所から、破産手続開始決定が出ます。

破産管財人とはどんな人?

破産手続開始決定と同時に、裁判所が「破産管財人」(通常は弁護士)を選任します。

「怖い人が来て厳しく追及されるのでは?」と心配される方が多いのですが、破産管財人は破産会社の財産(破産財団)の管理処分権者として、財産の調査、管理、換価や契約関係の整理など、すべての管財業務を行ってくれる人です。

確かに財産の状況などいろいろ質問されますが、嘘をつかずに正直に答えれば問題ありません。ただし、不動産の売却など重要な財産の処分には、裁判所の許可が必要になります。

債権者集会って何?

破産手続開始決定と同時に、債権者集会の期日が定められます:

債権者集会って何をする場所?

債権者集会では、破産管財人が債権者に対して、財産や債権の状況、管財業務の遂行状況などを報告します。

「お金を貸してくれた銀行の人たちに囲まれて、つるし上げられるのでは?」と怖がる代表者の方が多いのですが、実際は破産管財人が淡々と報告するだけで、短時間で終わることがほとんどです。

重要な注意点:代表者ご本人が出席する義務があり、代理人が出席しただけでは義務を履行したことになりません。体調不良などやむを得ない事情がある場合は考慮されますが、基本的には本人出席が必要です。

手続きが終わるまでどのくらいかかる?

破産手続開始決定から終結決定までの期間は、平均して6か月程度です。財産が少ない場合はもっと早く終わることもあります。

最後の配当が終了すると、その旨を報告するための債権者集会が開かれ、その後、裁判所が破産手続終結の決定を行います。これにより法人は消滅し、配当されなかった債権も消滅します。

2. 建設業ならではの心配事と対策

工事途中で止めることになったらどうなる?

これが建設業の代表者の方が一番心配されることです。

建設工事は工事期間が長期に及ぶことが多く、その途中で受注者が破産すると工事を続行できなくなるリスクがあります。

  • 代替業者の手配と工事費用の増加:工事を引き継ぐ代わりの業者を手配する必要がありますが、多くの場合、途中で業者が交代すると工事費用が当初の予定より割高になります。
  • 前払金の回収困難:破産した受注者に対し、工事の出来高を超える前払金を支払っていた場合、その超過分を取り戻そうとしても、この債権は破産債権となり、破産手続における配当等によらなければ回収できません。

対策:できるだけ早く事業停止を決断し、(弁護士を通じて)お客様に正直に事情を説明して謝罪することが大切です。

下請け業者への支払いが残っている

「下請けの○○会社に迷惑をかけてしまう」「代金を払えない」と涙ながらに相談される代表者の方が多くいらっしゃいます。

確かに下請け業者にはご迷惑をおかけしますが、隠していても状況は悪化するだけです。建設業では多数の下請業者との契約関係があり、破産により大きな影響を与えることは避けられません。

できるだけ早く事情を説明し、頭を下げることが大切です。下請け代金も破産手続きの中で他の債務と一緒に処理されます。

3. 代表者に課せられる義務について

破産管財人への協力は必須

破産手続において、代表者には破産管財人が行う調査に協力する義務を負います。具体的には、管財人との面談に応じたり、財産状況について説明したりする必要があります。

債権者一覧表の提出

破産の申立てを行う場合、原則として債権者一覧表を裁判所に提出する必要があります。

重要財産の開示

破産手続開始の決定後遅滞なく、所有する不動産、現金、有価証券、預貯金その他裁判所が指定する財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければなりません。

義務違反のリスク

これらの義務に違反した場合、損害賠償責任を問われる可能性があります。また、説明義務に違反して説明を拒んだり、虚偽の説明をした場合、刑事罰が科される可能性もあります。

4. 代表者個人のこと、ご家族のことで心配になること

個人保証債務はどうなる?

中小の建設会社では、法人の債務に対して代表者が個人保証しているケースが少なくありません。法人の破産手続を進めると同時に、代表者個人の債務整理についても検討が必要です。

経営者保証ガイドラインの活用

従来は代表者の方も個人破産するしかありませんでしたが、最近は「経営者保証に関するガイドライン」という制度を使って、自己破産せずに済む場合が増えています。

このガイドラインの活用により、以下のメリットがあります:

  • 一定の資産を手元に残しつつ再起を図れる可能性
  • 自宅を手放さずに済む可能性がある
  • 当面の生活費を手元に残せる
  • 信用情報(ブラックリスト)に載らない

ただし、銀行等の債権者全員の同意が必要で、代表者の方が誠実に対応していることが大前提です。

家族への影響は?

「妻の名義の預金も取られるのか?」「子供の大学費用はどうなるのか?」と心配される方が多いです。

奥様名義の財産でも、実際には会社のお金だった場合は問題になることがありますが、純粋に奥様の収入から貯めたお金などは大丈夫です。

お子様の学費については、破産管財人と相談すれば配慮してもらえる場合もあります。

従業員の給料はどうなる?

従業員の給料は「優先的に支払われる債権」として扱われ、ある程度は保護されます。

また、「未払賃金立替払制度」という国の制度があり、条件を満たせば8割程度は国が立て替えて支払ってくれます。

5. なぜ早く弁護士に相談した方がいいのか?

迅速な申立てと財産保全

事業停止から時間が経つと、工事現場の資材や資料が散逸するリスクが高まります。申立費用が確保でき次第、速やかに破産申立てを行うことが望まれます。

正確な財産状況の把握

相談を受ける段階で、建設業特有の許認可の状況、各工事現場の進捗、多数の下請業者との契約関係、リースしている重機・車両の扱い、資産・負債の状況(特に担保設定の有無)などを詳細に聴取し、財産状況を正確に把握することが不可欠です。

経営者保証ガイドラインの適用可能性

早期に専門家が関与することで、経営者保証ガイドラインの要件である「誠実性」を確保しやすくなります。債権者との調整も円滑に進み、個人保証債務の軽減可能性が高まります。

どんな資料を用意すればいい?

相談のときは完璧な資料は要りません。

  • だいたいの借金の額がわかるもの(返済予定表など)
  • 通帳(会社・個人)
  • 決算書(最新のもの)
  • 工事契約書(主要なもの)
  • 建設業許可証
  • 固定資産税の明細(不動産がある場合)

「資料がそろわないから」と相談を先延ばしする必要はありません。

最後に:一人で抱え込まないでください

建設業の法人破産は、工事の継続性や公共工事の前払金、多数の下請業者との契約関係など、特有の複雑な問題を抱えています。これらの法的な問題を正確に理解し、関係者への影響を最小限に抑えるためにも、経営状況が悪化した際には、早期に専門家である弁護士に相談することが極めて重要です。

破産を考えなければならない状況は、代表者の方にとって人生最大の危機だと思います。「情けない」「申し訳ない」という気持ちでいっぱいでしょうが、ご自身だけの責任ではありません。

一人で悩んでいても解決しません。むしろ状況が悪化するだけです。勇気を出して、専門家に相談してください。必ず解決の道筋は見つかります。破産は人生の終わりではなく、新しいスタートのための清算です。

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