コラム

2025.09.08

資金繰りに限界を感じている美容室経営者へ-破産のススメ

ひとりで悩まずに、弁護士にご相談ください!

 美容室を経営されている皆さま、今このコラムを読んでいるということは、きっと経営に不安を感じていらっしゃるのではないでしょうか。

 「今月の家賃が払えるだろうか」 「スタッフの給料日が近づくと胃が痛くなる」 「材料費の支払いをまた待ってもらうしかない」

 このような悩みを抱えながら、誰にも相談できずに一人で苦しんでいませんか?

 これまで、「破産なんて恥ずかしい」「お客様に申し訳ない」「スタッフを裏切ることになる」と悩んで、なかなか破産に踏み切れなかった方のご相談を、多々うかがいました。

 ただ、美容室業界の現状を考えれば、破産は決して恥ずかしいことではありません。近年、厳しい競争のせいで、たくさんの美容室が破産しています。あなたが苦しんでいるのは、あなたの経営が下手だからではありません。業界全体が大きな嵐に見舞われているのです。

 このコラムでは、美容室経営が苦しくなったときに、どのように考え、どのように行動すればよいのかを、できるだけ分かりやすくお伝えします。破産は決して「失敗」ではなく、新しい人生への「リスタート」です。

なぜ今、こんなに美容室経営が厳しいのか

 最近、安さを売りにする新しいお店が、どんどん開店しています。その一方、競争の厳しさで、毎年、たくさんの店舗が、閉店しています。

人件費がどんどん上がっている

 「スタッフの給料を上げてあげたい」という気持ちは、経営者なら誰でも持っています。でも、売上げが増えない中で人件費だけが上がっていく。これは本当に苦しいことです。最低賃金が年々アップし、経営者を苦しめる状況にあります。

 さらに、美容師不足も深刻です。良いスタッフを確保するためには、他店より高い給料を出さなければならない。でも、それができる余裕がない。このジレンマに苦しんでいる経営者の方がたくさんいらっしゃいます。

お客様が減っている

 高齢のお客様は、以前は月1回来店していたのが、今では年に数回しかいらっしゃらなくなっています。体力的な問題や、年金で厳しい生活を余儀なくされていることが理由です。

 若いお客様も、SNSで見つけた安いお店に流れたり、自分でカラーリングをしたりするようになりました。1,000円カットのお店も増えています。

コロナの問題は、いまだに続いている

 コロナ禍で借りたお金の返済が始まっています。当時は「返済猶予があるから大丈夫」と思っていたかもしれません。でも、今になってその重さを実感している方が多いのではないでしょうか。感染対策のための設備投資、消毒作業の手間、席数を減らしたことによる売上減少。これらの影響は今も続いています。

「もう限界かも」と思ったときのサイン

次のような状況に心当たりはありませんか?

お金の面で:

  • 家賃の支払いが1ヶ月以上遅れている
  • スタッフの給料日が怖い
  • 仕入れ代の支払を待ってもらっている
  • 自分の生活費を削ってお店の運転資金に回している
  • クレジットカードの限度額いっぱいまで使っている

気持ちの面で:

  • お店に行くのがつらい
  • 眠れない日が続いている
  • 家族との会話が減った
  • お客様の前で笑顔を作るのが苦痛
  • 将来のことを考えると息苦しくなる

経営の状況で:

  • 予約が埋まらない日が増えた
  • 常連のお客様が来なくなった
  • 設備が壊れても修理できない
  • 広告を出す余裕がない
  • 競合店の価格に対抗できない

 これらのサインが3つ以上当てはまったら、それは「弁護士に相談するタイミング」です。恥ずかしいことではありません。むしろ、早めに専門家に相談することが、リスタートにつながるのです。

破産のメリット ― なぜ早めの決断が大切なのか

1. 借金から解放される

 一番大きなメリットは、借金の支払義務がなくなることです。毎月の返済に追われる生活から解放されます。督促の電話に怯える必要もなくなります。あの重い気持ちから解放されることを想像してみてください。

2. 人生をやり直すチャンスが得られる

 借金のプレッシャーがなくなれば、冷静に将来を考えられるようになります。雇用で再出発する人、全く違う仕事にチャレンジする人、しばらく休養してから新しいお店を始める人、様々な道があります。

3. 家族との時間が取り戻せる

 お金の心配で頭がいっぱいだった毎日から解放されれば、家族との会話も増えます。子どもの成長を見守る余裕も生まれます。家族の笑顔を取り戻すことができるのです。

4. 健康を取り戻せる

 ストレスから解放されることで、心の健康も、体の健康も取り戻せます。健康があってこそ、新しいスタートが切れるのです。

5. 前向きな気持ちになれる

 借金の重圧から解放されると、多くの方が「もっと早く決断すればよかった」とおっしゃいます。暗いトンネルの出口が見えたような、そのような気持ちになれるのです。

スタッフのことが心配なあなたへ

 「スタッフを路頭に迷わせることになる」

 これは、経営者の方が一番悩むポイントです。でも、知っていますか? 破産してもスタッフの権利は守られるんです。

未払い給料は国が立て替えてくれる

 もしスタッフへの給料が払えていない場合、国の制度で最大80%まで立て替えてもらえます。これは「未払賃金立替払制度」という制度です。

 (条件がありますが)例えば、3ヶ月分の給料30万円が未払いなら、24万円は国から支払われます。スタッフは労働基準監督署に申請するだけで、この制度を使えるのです。

失業保険(基本手当)もすぐにもらえる

 通常、自己都合で退職すると失業保険(基本手当)をもらうまでにしばらく待たなければなりません。一方、会社の破産による退職なら、すぐに失業保険がもらえます。これは「特定受給資格者」として扱われるからです。

お客様への責任について

「お客様の回数券やプリペイドはどうなるの?」

 これも大きな悩みです。破産した場合、お客様への返金は難しくなります。配当があったとしても数パーセント程度しかお返しできません。

だからこそ早めの対応が大切

時間的に余裕があれば、このような対応ができます:

回数券の処理方法:

  • 期限を決めて、できる限りサービスを提供する
  • 他の美容室と提携して、サービスを引き継いでもらう
  • サービス内容を変更して対応する(カットのみにするなど)

 ギリギリまで粘って突然閉店することになったら、お客様の信頼を裏切ることになってしまいます。

弁護士に相談するタイミング

いつ相談すべきか

「まだ大丈夫」と思っているうちに相談することが大切です。具体的な目安をお伝えします。

今すぐ相談すべき状況:

  • 来月の家賃が払えそうにない
  • スタッフの給料が遅れそう
  • 税金の督促が来ている
  • 借金の返済が3ヶ月以上遅れている
  • 裁判所から書類が届いた
  • 債権者から「法的措置を取る」といわれた
  • 銀行から追加融資を断られた

早めに相談した方がいい状況:

  • 売上が去年より30%以上減っている
  • 毎月赤字が続いている
  • 借金の返済で自転車操業になっている
  • 個人のクレジットカードで事業資金を賄っている
  • 家族からお金を借りている

弁護士費用について

「弁護士費用なんて払えない」と思うかもしれません。でも、多くの弁護士事務所では以下のような対応をしています:

相談料:

  • 個人事業主の場合は、ご相談は何度でも無料です。
  • 会社の場合も、初回相談無料です。

当事務所の手数料:

  • 費用については、ご相談時にお見積もりいたします。
  • 分割払にて承っています。

裁判所に支払う予納金(大阪地方裁判所の場合):

  • 同時廃止事件:約12,000円程度(官報公告費など)
  • 管財事件:約23万円以上(予納金含む)

破産手続きの流れ

ステップ1:弁護士に相談・依頼

  • 状況を説明し、破産が適切か判断してもらう
  • 他の方法がないか検討する
  • 費用や期間について説明を受ける

ステップ2:受任通知の発送

  • 弁護士から債権者に通知が送られる
  • これで取立てが止まる
  • 精神的に楽になる時期

ステップ3:申立て準備

  • 必要書類を集める(2~3ヶ月)
  • 財産目録を作成する
  • 陳述書を作成する

ステップ4:裁判所への申立て

  • 当事務所から申立書類を提出
  • 破産管財人との面接(審尋)
  • 破産手続開始決定

破産で残せる財産と処分される財産

残せる財産(自由財産)

破産しても、以下の財産は手元に残せます:

1. 99万円までの現金

  • 破産法で認められた金額
  • 生活再建のための資金

2. 生活に必要な家財道具

  • 冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ
  • テレビ、エアコン
  • ベッド、布団、タンス
  • 食器、調理器具
  • 普段着る衣類

3. 仕事に必要な道具

  • 美容師のハサミやコーム(一部)
  • パソコン(仕事で使う場合)
  • 仕事着

処分すべき財産

以下の財産は、原則として処分対象になります:

1. 20万円以上の価値がある財産

  • 解約返戻金が20万円以上の生命保険
  • 査定額20万円以上の自動車
  • 20万円以上の預貯金

2. 不動産

  • 自宅(住宅ローンが残っていても)
  • 土地
  • 投資用物件

3. 高額な動産

  • 高級時計
  • 宝石、貴金属
  • 美術品
  • ゴルフ会員権

4. 債権

  • 売掛金
  • 貸付金
  • 退職金見込額の8分の1(20万円超の場合)

財産を残すための注意点

やってはいけないこと:

  • 破産直前に財産を他人名義に変える
  • 財産を隠す
  • 特定の債権者にだけ返済する(偏頗弁済)
  • 財産を不当に安く売る

これらは「免責不許可事由」となり、借金が免除されない可能性があります。

破産後の生活はどうなる?

美容師の仕事は続けられる

 破産しても、美容師として働くことはできます。美容師免許が取り消されることはありません。雇われて働くことも、いずれは独立することも可能です。

 ただし、破産手続き中は以下の職業に就けません(復権すれば就けます):

  • 弁護士、司法書士、税理士などの士業
  • 宅地建物取引士
  • 生命保険募集人
  • 警備員
  • 会社の取締役(ただし、破産後でも選任は可能)

 美容師は制限される職業に含まれていないので、安心してください。

信用情報について

 破産すると、信用情報機関に事故情報として登録されます(いわゆる「ブラックリスト」)。もっとも、ブラックリストに掲載される期間は、5年~10年程度に限られます。

家族に向けて

 もし、ご家族がこのコラムをお読みの際は、お伝えしたいことがあります。

 美容室を経営している家族が苦しんでいるとき、「もっと頑張れ」と言わないであげてください。本人が一番頑張っています。一番苦しんでいます。

 代わりに、このような言葉をかけてあげてください:

 「一人で抱え込まないで」 「一緒に専門家に相談しに行こう」 「どんな結果になっても、家族は味方だよ」 「あなたの健康が一番大切」 「今まで本当によく頑張ったね」

 破産は家族の恥ではありません。苦しい状況を乗り越えようとする、勇気ある決断です。

ご相談前におすすめすること

ステップ1:現状を紙に書き出す

怖くても、現実を見つめることから始めましょう。

書き出すこと:

  • 月の売上
  • 月の経費(家賃、人件費、材料費など)
  • 借金の総額
  • 月々の返済額
  • 手持ちの現金
  • 預金残高
  • その他の財産

ステップ2:家計簿をつける

個人のお金と事業のお金を分けて考えましょう。

個人の支出:

  • 生活費
  • 子どもの教育費
  • 住宅ローンや家賃
  • 保険料

事業の支出:

  • 店舗家賃
  • 人件費
  • 材料費
  • 水道光熱費

ステップ3:期限を決める

「○月○日までに状況が改善しなければ、弁護士に相談する」

このように期限を決めることで、ずるずると先延ばしにすることを防げます。

期限設定の例:

  • 3ヶ月後の売上が○○万円以下なら相談
  • 次の給料日に支払えなかったら相談
  • 税金の督促が来たら相談

よくある質問と答え

Q1:破産したら、もう美容師として働けないの?

A:いいえ、働けます。美容師免許は失いませんし、技術も残ります。多くの方が破産後も美容師として活躍しています。

Q2:破産したら家族に迷惑がかかる?

A:保証人になっていなければ、家族に借金の支払い義務はありません。ただし、精神的な負担はあるので、きちんと話し合うことが大切です。

Q3:破産したことは周りにバレる?

A:官報には載りますが、一般の人が見ることはほとんどありません。自分から言わない限り、知られることは稀です。

Q4:破産後、いつからクレジットカードが作れる?

A:通常5~10年後には作れるようになります。その間は現金やデビットカードで生活することになります。

Q5:賃貸アパートは借りられる?

A:借りられます。ただし、信販系の保証会社は通らない可能性があるので、保証人を立てるか、別の保証会社を使う必要があります。

Q6:スタッフの給料が払えていないけど大丈夫?

A:未払賃金立替払制度により、国が80%まで立て替えてくれます。スタッフの生活も一定程度守られます。

Q7:お店の設備はどうなる?

A:リース物件はリース会社に返却、所有物は原則処分対象ですが、価値が低いものは残せることもあります。

Q8:破産後、また美容室を開業できる?

A:できます。ただし、当面は融資を受けられないので、自己資金を貯めるか、スポンサーを見つける必要があります。実際のところ、しばらくの間は他の美容室で働いて、再出発する方が多いです。

弁護士からのメッセージ

 破産は「失敗」ではなく「再出発」です。 破産は「終わり」ではなく「始まり」です。美容師としての技術も、経営者としての経験も、決して無駄にはなりません。

 一番大切なのは、ご自身の心と体の健康です。お店を守ることも大切ですが、ご自身を守ることはもっと大切です。

 破産や廃業を選んだとしても、美容師としての腕前は消えません。お客様を笑顔にしてきた思い出も消えません。スタッフと一緒に頑張った日々も、決して無駄ではありません。

 経営にお悩みの際は、1人で抱え込まず、ぜひ弁護士にご相談ください!

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