はじめに
近年、日本の老舗企業を取り巻く環境が急速に厳しさを増しています。帝国データバンクの調査によれば、2024年上半期(1-6月期)における創業100年以上の老舗企業の倒産件数は74件を記録し、前年同期(38件)と比較して約2倍増加しています。このコラムでは、老舗企業特有の倒産問題と、弁護士に相談すべきタイミングについて、実務的な観点から解説していきます。
老舗企業を取り巻く現状
1. 最新動向の分析
2024年上半期の老舗企業倒産を業種別に見ると、製造業が22件で最多を占め、次いで小売業が21件と続いています。両業種で全体の約6割(58.1%)を占めており、特に深刻な状況といえます。倒産の具体的な要因としては、原材料費の高騰、後継者不在などが挙げられます。
2. 老舗企業特有の課題
老舗企業の倒産問題で特徴的なのは、以下の3つの要素が複雑に絡み合っている点です。
(1)経営面の課題
- 伝統的な経営手法と現代的な経営環境との齟齬
- デジタル化への対応の遅れ
- 固定客の高齢化と新規顧客開拓の困難さ
(2)事業承継の問題
- 後継者の不在
- 事業承継時の税負担
- 伝統技術の継承困難
(3)財務面の課題
- 設備の老朽化と更新投資の負担
- 人件費の固定費化
- 原材料費の高騰による収益性の低下
倒産手続において老舗企業が抱えやすい課題
老舗企業の倒産手続においては、様々な課題があります。
(1)資産評価の複雑さ
- 老舗ブランドとしての暖簾価値の評価
- 伝統的な製法やノウハウなど無形資産の評価
- 古美術品や骨董品など特殊な在庫の評価
(2)利害関係者との調整
- 長期取引先との関係調整
- 地域社会への影響への配慮
- 伝統文化保護の観点からの調整
(3)従業員対応
- 伝統技術の継承問題
- 長期間にわたって功労していた従業員への処遇
専門家に相談すべきタイミング
老舗企業において次のような兆候が見られた場合には、専門家への相談をおすすめします。
(1)財務面の警告サイン
- 2期連続の経常赤字
- 借入金の返済遅延
- 仕入先への支払い遅延
(2)営業面の警告サイン
- 顧客数の継続的減少
- 主力商品の競争力低下
- 固定客の減少
(3)組織面の警告サイン
- 後継者不在
- 核となる従業員の退職
- 技術継承の停滞
弁護士からのアドバイス
老舗企業の危機対応において最も重要なのは、「早期発見・早期対応」です。問題が表面化してからでは、選択できる対応策が限られてしまいます。定期的な経営状況のチェックと、必要に応じた専門家への相談を心がけることで、伝統ある事業の存続可能性を高めることができます。

