大阪生まれの奈良育ち。夏の高校野球観戦が楽しみです。お互いのことを何一つ知らないご依頼者と弁護士が、少しずつ距離を縮めながら、人生の一大事の解決に向かうわけですから、ていねいにお話しをうかがって心を開いていただくことの大切さを痛感しています。
借金問題における任意整理の特徴(個人再生との比較)
はじめに
借金の返済が苦しくなってきたときに使える手段として、任意整理というものがあります。任意整理は、弁護士が債権者とそれぞれ交渉して、利息カットと長期分割払いを求めるものです。この点、同じく借金の返済が苦しくなってきたときに使える個人再生も、利息カットと長期分割払いを求める手続きです。
二つの手段は、利息カットと長期分割払いを求めるという点で類似しますが、異なる点が数多くあります。このページでは、任意整理の特徴について、個人再生と比較して
任意整理と個人再生の違い
任意整理を個人再生と比較した場合の特徴は、以下の①~⑧の通りです。
No | 任意整理を個人再生と比較した場合の特徴 |
① | 元本の圧縮はできない |
② | 整理対象にする債権者を選択できる |
③ | 準備すべき資料が少ない |
④ | 家族に内緒のまま手続きをしやすい |
⑤ | 残せる財産の範囲が広い |
⑥ | 財産価値が大きくても利用しやすい |
⑦ | 借金が少額でも利用しやすい |
⑧ | 官報に掲載されない |
そのため、①´利息をカットして元本を長期分割できれば支払いが可能であることを前提に、以下のような方が任意整理を利用されることがあります。
②´手続きから外したい債権者がいる人
③´資料収集の負担を避けたい人
④´借金や債務整理について家族に内緒にしたい人
⑤´借金の担保に入れている財産を残したい人
⑥´自宅の価値などが大きい人
⑦´借金総額が少ない人
⑧については、任意整理の特徴ですが、この点が手続き選択の決定的要素になることはあまりない印象です。
以下、任意整理と個人再生の違いについて、詳しく見ていきます。
元本の圧縮はできない
個人再生は、借金の利息をカットするだけでなく、元本も圧縮できます。例えば、借金が500万円~1500万円であれば、最大5分の1まで圧縮になります。借金が500万円であれば、最大100万円まで圧縮になり、3年払いであれば毎月28,000円ほどの支払いになります。
一方、任意整理は、利息のカットは可能ですが、元本は圧縮できません。借金が500万円で5年払いであれば、毎月84,000円ほどの支払いになります。このように、任意整理では毎月の支払額は個人再生より大きくなるケースが多いため、毎月の余剰が大きい方が利用されています。
任意整理では利息は0%になることが多いですが、業者や取引状況によっては、利息のカットができない場合もありますし、カットできたとしても0%にならない場合もあります。また、和解成立後の将来利息はカットできるとしても、支払停止から和解成立までの経過利息の支払いは必要になることがほとんどです。
分割回数は、60回程度が上限ですが、業者や取引状況によってはより短期間での支払いが求められることがあります。一方、一部業者では、60回を超える分割回数が認められることがあります。
業者別では、消費者金融は任意整理の対応が厳しいことが多く、クレジットカード会社は任意整理の対応が比較的緩いことが多いと言えます。
整理対象にする債権者を選択できる
個人再生は、全ての債権者を対象として手続きをする必要があります。
これに対し、任意整理は、全ての債権者を対象にすることもできますし、一部の債権者だけを対象にすることもできます。例えば、以下のようなケースが考えられます。
- ・ 車を残したいという理由でオートローンを整理から外す
- ・ 保証人への請求を避けたいという理由で奨学金を整理から外す
- ・ メインバンクからの借入について整理から外す。
そのため、一部の債権者を外して手続きをしたいという方が、任意整理を利用されることがあります。
準備すべき資料が少ない
個人再生では、申立のために以下の資料等が必要になります。集めるべき資料が多岐にわたるため、多忙であるなどの理由で、資料を集めるのに苦労される方が多い印象があります。
・ 住民票
・ 自宅不動産の全部事項証明、または、賃貸借契約書
・ 源泉徴収票
・ 同居家族も含めた給与明細書
・ 預貯金通帳
・ 保険証券
・ 保険の解約返戻金証明書
・ 退職金額の分かる規程
・ 車検証
・ 家計収支表
・ 水道光熱費の領収証・通帳記載
・ 住宅ローンに関する資料
これに対し、任意整理は、以上のような資料を集める必要がありません。そのため、資料収集の負担を避けたい方が任意整理を利用されることがあります。なお、債権者から資料の提出が求められるのであれば任意整理でも資料収集の必要がありますが、そのようなことはほとんどありません。
家族に内緒のまま手続きをしやすい
借金をしている人の中には、借金自体や債務整理のことを家族や親戚に内緒にしている人がいると思います。この点に関連して、家族・親戚が保証人になっている借入がある場合に個人再生をすると、債権者から家族・親戚に請求がいきますので、内緒のまま手続きはできません。
また、資料収集の部分に記載した通り、個人再生では、裁判所に同居家族の給与明細や、家計収支表・裏付け資料を提出する必要があります。家族の給与明細を手に入れたり、家族全体の家計収支表を作成するには、家族に借金のことや債務整理のことを話さざるを得ない可能性があります。
これに対し、任意整理では、債権者を選択できますので、保証人付きの借入を整理対象から外すことで、内緒のまま手続きが可能です。また、任意整理では、債権者に同居家族の給与明細や詳細な家計収支表の提出を求められることはまずありません。そのため、任意整理は、個人再生と違って家族に内緒で手続きを進めたい方が利用されることがあります。
残せる財産の範囲が広い
個人再生では、基本的に財産を残せますが、借金の担保に入れている財産は残すことができません。よく問題になるのは、所有権留保(第三者対抗要件を満たすもの
これに対し、任意整理では、整理対象にする債権者を選択できるため、オートローンを整理から外すことで、所有権留保のついている自動車を残すことができます。
財産価値が大きくても利用しやすい
個人再生では、借金より財産の方が大きい場合、利用が認められないことが考えられます。また、借金が財産よりわずかに大きい程度である場合、元本がほとんど圧縮できないため、手続き負担の大きさに見合ったメリットがないと言えます。よく問題になるのは、住宅ローンを完済しているか、住宅ローン残高が減っていて、自宅価値が大きいというケースです。
これに対し、任意整理は、借金より財産の方が大きくても手続きができます。また、借金が財産よりわずかに大きい程度である場合でも、個人再生の手続き負担の大きさを避けることができますので、十分なメリットがあると言えます。
借金が少額でも利用しやすい
個人再生では、借金の総額が100万円未満の場合、元本が圧縮されません。また、借金総額が100万円強の場合、元本がほとんど圧縮できません。そのため、借金が100万円程度の場合、手続き負担の大きさに見合ったメリットがありません。
これに対し、任意整理は手続き負担が小さいため、借金が100万円程度の場合でも利用しやすいと言えます。
その他任意整理を希望されるケース
以上のようなケース以外に、裁判所の手続きまでは使いたくない、借りたものなので元本だけは支払いたいといった理由で、個人再生ではなく任意整理を選択されるケースもあります。
以上のような理由であれば、必ずしも任意整理を選択しないといけないわけではありませんが、こういった理由で任意整理を選択される方がいらっしゃいます。
弁護士によるまとめ

弁護士への相談が遅くなると、借金が大きくなって任意整理で解決できないケースも増えてしまいます。借金の返済が苦しくなってきたら、早めに弁護士に相談することが大切です。
借金問題について今すぐ相談したい方は、お気軽にお問い合わせください




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