大阪生まれの奈良育ち。夏の高校野球観戦が楽しみです。お互いのことを何一つ知らないご依頼者と弁護士が、少しずつ距離を縮めながら、人生の一大事の解決に向かうわけですから、ていねいにお話しをうかがって心を開いていただくことの大切さを痛感しています。
個人再生利用に適したケースについて
このコラムの解説内容
コラム:返せない借金をしている場合、自己破産したほうがいいのか?
このページでは、個人再生手続きの概要と、どのような場合に個人再生利用が適しているか、どのような方が個人再生を利用しているかについて見ていきます。なお、個人再生の中には、小規模個人再生(民事再生法221条~238条)と給与所得者等再生(民事再生法239条~245条)がありますが、一般的に小規模個人再生を利用することが多いため、以下では、小規模個人再生を前提に解説をします。
個人再生手続きの概要
個人再生は、簡単に言うと、借金を圧縮した上で、無利息分割払いを裁判所に認めてもらう手続きです。どの程度借金が圧縮されるかですが、以下の①②のいずれか大きい額になります(民事再生法231条2項3号・4号、174条2項4号)。
①債務額基準
債務額 | 圧縮後の金額 |
100万円未満 | 債務額通り |
100万円以上~500万円以下 | 100万円 |
500万円超~1500万円以下 | 5分の1 |
1500万円超~3000万円以下 | 300万円 |
3000万円超~5000万円以下 | 10分の1 |
②財産額
①について、個人再生を希望される方の借入額は、500万円~1500万円ということが比較的多く、財産が大きくなくて借金が5分の1に圧縮となれば、借金を大幅に減額できます。
また、個人再生と同じように裁判所を通して債務を整理する手続きである自己破産と比較すると、以下の特徴があります。
No | 自己破産と比較した個人再生の特徴 |
① | 住宅ローンがついている自宅を手放さなくて済むこと |
② | 担保権のついていない財産は手放す必要がないこと |
③ | 浪費等が借金の原因であっても、個人再生が認められること |
④ | 資格制限がないこと |
そのため、①´住宅ローンが残っている自宅を残したい人、②´残したい財産がある人、③´浪費等により借金が増えた人、④´一定の資格を前提に仕事をしている人が、個人再生をよく利用されています。
持ち家を残せること
自己破産では、持ち家は手放す必要があります。
これに対し、個人再生では、住宅ローンをそのまま支払い続けて自宅を残すことが認められています(民事再生法196条~206条)。持ち家を手放すと生活に大きな影響がありますので、自宅を残せる可能性があるというのは、個人再生を選択する大きな理由になります。実際に、住宅ローン付きの自宅を残したいという理由で、自己破産ではなく個人再生を選択される方が多くいらっしゃいます。
担保権のついていない財産を残せること
自己破産は、簡単に言うと、借金を0にする代わりに、一定の価値のある財産は手放す必要がある手続きです。具体的には、自己破産では最大99万円までの財産を残すことができますが、生命保険の解約返戻金・自動車等で99万円を超える価値があるものは、基本的に手放す必要があります(大阪地裁の運用)。退職金は額面の8分の1が財産と評価され、退職しない限り支払われないため、自己破産したとしても手放す必要はありませんが、最大で額面の8分の1を現金として準備する必要があります。
これに対し、個人再生では、財産の価値に関わらず、担保権のついていない財産は手放す必要がありません。そのため、一定の価値のある財産を持っている人が、自己破産ではなく個人再生を利用することがあります。例えば、以下のようなケースが考えられます。
No | 一定の財産を残せる等の理由で個人再生を利用するケース |
① | 学資保険で200万円の解約返戻金があるが、子どもが大学生等になるときに備えて残しておきたい |
② | ローンを払い終わった自動車について150万円の価値があるが、生活に必要なので残したい |
③ | 退職金が2000万円(財産価値としては250万円)あって、自己破産でまとまった形で250万円を準備するのは困難だが、個人再生で3年分割すれば支払っていける |
個人再生利用にあたって借入の原因は問われないこと
自己破産は、全てのケースで借金の免責が認められるのではなく、一定の事由がある場合、免責が認められないことがあります。例えば、借入原因が浪費の場合、破産では、免責不許可事由があるとして、免責が認められず、借金が残ってしまうことがあります(破産法252条1項4号)。また、一部の債権者だけ優先的に返済をしてしまった場合や、クレジットカードの現金化が行われた場合なども、免責不許可事由があるとして、免責が認められないことがあります(破産法252条1項2号・3号・5号)。
これに対し、個人再生では、破産のような免責不許可事由は定められていないため、浪費が借入の原因であっても、他の要件で問題がなければ、借金の圧縮が認められます。そのため、浪費が原因で借入が増えたという方が、個人再生を利用されることがよくあります。
解決方法 | 免責・借金の圧縮の可否について |
自己破産の場合 | 浪費等の免責不許可事由がある場合は、借金が残ることがある |
個人再生の場合 | 浪費が借入の原因であっても、他の要件で問題がなければ借金の |
資格制限がないこと
自己破産をすると、資格が制限され、一定の仕事ができなくなってしまいます。制限される資格は多岐にわたりますが、よくあるのは、警備員(警備業法14条1項、3条1号)・生命保険募集人(保険業法307条1項1号、279条1項1号)・宅地建物取引主任者(宅地建物取引業法5条1項1号)・証券外務員(金融商品取引法64条の2第1項1号、29条の4第1項2号ロ)・会社役員(取締役・執行役員・監査役、民法653条2号で破産が委任の終了事由とされているため)等です。
これに対し、個人再生では、破産のような資格制限はありません。そのため、警備員や生命保険募集人等の仕事をしている方が、個人再生を利用されることがよくあります。
解決方法 | 資格制限 |
自己破産の場合 | 警備員や生命保険募集人、宅地建物取引主任者、証券外務員、会 |
個人再生の場合 | 資格制限がない |
破産を避けたいと希望されるケース
以上のようなケース以外に、破産のイメージが良くない、借りたものなので少しでも支払いたいといった理由で、自己破産ではなく個人再生を選択されるケースもよくあります。
このような場合、必ずしも破産を避けて個人再生をしないといけないわけではありませんが、意外とこういった理由で個人再生を選択される方が多くいらっしゃいます。
弁護士によるまとめ
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