消滅時効援用って？

わかる！債務整理

長い間支払っていなかった借金は、消滅時効援用という手続きをすることで、支払わなくてよくなる可能性があります。消滅時効援用とはどういうことか、その方法やデメリット、手続きの流れ、弁護士に相談する必要性などについてご説明します。

借金を返さなくてよくなる、消滅時効援用。

“消滅時効”とは、一定期間行使されない権利を消滅させる制度のことです。借金の場合、支払い期限が過ぎても、貸した側が借りた側に請求などをしないまま時効（5年）が完成すると、その時点で、借りた側が消滅時効援用の手続きをすれば、貸した側は返済請求ができなくなります。期間が経過しただけではだめで、援用手続きをしないと、返済義務はなくなりません。

借金の消滅時効援用とは、時効が完成した借金（債権）の返済義務を免れるための手続きのことです。

消滅時効援用が認められるには。

消滅時効援用が認められるには、下記のような要件を満たすことが法律で定められています。
①支払い期限から5年以上支払っていないこと。（民法166条1項1号）
②時効完成前に裁判をされている場合は、裁判確定から10年以上経過していること。（民法147条2項・169条1項）
③途中で少しであっても返済をしていないこと。（民法152条1項）
④途中で債務を承認していないこと。（民法152条1項）

こんな場合はダメです。

・記憶間違いなどで支払い期限から5年以上経過していなかった。
・5年は経過しているけれど、途中で裁判をされていた。
・支払い期限が過ぎてしばらくしてから業者と協議して和解書を作成し、それから5年経っていない。
といった場合は、消滅時効援用は認められません。時効援用しようとしているのが保証債務の場合には、主債務者による支払が問題となることもあります。

返済請求が来たら、放っておかず弁護士に相談を。

業者からの請求を放っておけば不利益が発生する恐れがあります。早めに弁護士と相談して、対策を講じることをお勧めします。

1）貸金業者・債権回収会社等から請求書が届いた

請求書が届いただけでは直ちに実害が生じるわけではありません。しかし、放っておいても借金がなくなるわけでわけではなく、遅延損害金も膨らんでいきます。さらに、近いうちに裁判をされる可能性も考えられます。

2）裁判所から支払督促が届いた

あまり馴染みのない手続きかもしれませんが、支払督促が届いてから２週間以内に督促異議申立をするなど、適切な手続きをとらなければ、強制執行に至ったり、時効期間が10年に延長する（民事執行法22条4号、民法147条2項・169条1項）など、判決と類似の効果が発生します（民事訴訟法387条・396条）。

3）裁判所から訴状が届いたら

答弁書を提出せず、裁判期日に出廷しなければ、判決になります。判決に至ると、給料や預金を差し押さえられる可能性がありますし、時効期間が10年に延長され、大きな不利益が発生します（民事執行法22条1号、民法147条2項・169条1項）。

時効になった債権を請求してくるのはなぜ？

時効になった借金は、消滅時効を援用すると支払わなくてよくなり、遅延損害金も請求されません。一方で、請求をするには費用も手間もかかり、業者にとっては無駄なことのようにも思えますが、請求してくる業者は多数あります。
その理由として、①請求すると、全ての人が消滅時効を援用するわけではなく、支払う人もいる。②債務者が支払い後に時効になっていたことに気付いても、支払った分の返還を求めることはできない。③一部を支払ってしまうと、債務承認したことになり、残りの借金の時効が5年間延長される（民法152条1項）。④裁判で請求された場合、対応しなければ判決確定から10年間時効が延びる（民法147条2項・169条1項）。
などがあげられます。③④のように時効期間が延長されると、再度時効になるまでの間に支払いを受けられる可能性が残ります。以上の点から、業者には請求するメリットがあるというわけです。

よく請求してくる業者は

昔の借金を請求してくるのは、アコム・プロミス・アイフル・レイク・オリコなど有名な業者の場合もありますが、以下の表に記載したようなあまり馴染みのない業者ということもよくあります。取引当時と会社名が変わっていたり、債権回収会社に債権が移っていたりして、どこからの借入か分からないこともあると思います。法律事務所が代理人となって請求書が届くこともあります。いずれにしても、借金があることには変わりありませんので、放っておくことはできません。

ギルド（元ハッピークレジット・トライト・ヴァラモス）
クレディア（元武富士・日本保証・ステーションファイナンス・スタッフィ・トライト）
れいわクレジット（元三菱ＵＦＪニコス）
オリンポス債権回収（元ＣＦＪなど）
中央債権回収（元三菱ＵＦＪニコスなど）
ニッテレ債権回収　
ジェーピーエヌ債権回収
アビリオ債権回収
アイアール債権回収
パルティール債権回収

おさえておきたい、消滅時効援用のメリットとデメリット

手続きの中身自体はシンプルです。

時効になった借金は、消滅時効援用ができれば、返済する必要がなくなり、遅延損害金を支払う必要もありません。借金を支払う必要がなくなる、これが消滅時効援用のメリットです。弁護士に依頼して、配達証明付き内容証明郵便を債権者に送付してもらいましょう。

デメリットは、時効完成前だった場合、逆に請求されかねないこと。

10年程前の借金でも、時効が完成しているとは限りません

記憶間違いや計算違いの可能性はありませんか？時効になっていると思っていたのに、実はまだだったというのはよくあります。途中で裁判や強制執行などをされていても、時効はリセットされます。時効前に消滅時効援用をした結果、今まで請求されていなかった借金について、債権者から遅延損害金を含めた借金の全額を一括請求される可能性もあります。

支払い期限が過ぎた借金が複数あるなら

消滅時効援用には以上のようなリスクがあります。そのため、複数借り入れていて１社から請求が来た場合、残りの業者の分もまとめて手続きをするかどうか、よく検討する必要があります。請求が来ていない業者に消滅時効援用の手続きをしたら、実は消滅時効が完成していなかったために、請求を受けてしまう可能性があります。

消滅時効援用のリスクを減らすためには、時効の援用に詳しい弁護士と相談し、失敗する要因がないかを確認してもらうことが有効です。

消滅時効援用の手続き。

それぞれの手続きは、細心の注意と法的知識をもって慎重に進める必要があります。不備があると、逆に債務の承認と受け取られたりして、消滅時効援用ができなくなるおそれがあります。

誰に頼む？

弁護士・司法書士・行政書士が考えられますが、消滅時効援用に関わる手続きを一括して幅広く任せられる弁護士が安心です。

昔の借金を放置していませんか？

長い間支払えていなかった借金について請求を受けた場合、放っておかず適切に対応することが大切です。みお綜合法律事務所では、借金整理に関わる手続きを数多くお受けしており、消滅時効援用による解決例も多くあります。昔の借入について業者から請求書が届いた、裁判所から書類が届いたという方は、早いうちに、みお綜合法律事務所にご相談ください。