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借金問題解決コラム

個人再生における住宅ローン特則

このコラムを書いた弁護士
弁護士 羽賀 倫樹(はが ともき)

大阪生まれの奈良育ち。夏の高校野球観戦が楽しみです。お互いのことを何一つ知らないご依頼者と弁護士が、少しずつ距離を縮めながら、人生の一大事の解決に向かうわけですから、ていねいにお話しをうかがって心を開いていただくことの大切さを痛感しています。

このコラムの解説内容

個人再生では、住宅ローンをそのまま支払い続けて自宅を残すことが認められています(住宅資金貸付債権に関する特則、民事再生法196条~206条)。ただし、全ての住宅ローンについて利用が認められるのではなく、民事再生法の要件を満たさない場合は利用ができません。このページでは、個人再生における住宅ローン特則について見ていきます。

住宅ローン特則の利用要件

民事再生法上の住宅ローン特則の利用要件には、以下のようなものがあります。

 

No 民事再生法上の住宅ローン特則の利用要件
対象となる建物が「住宅」であること(民事再生法196条1号)
対象となる住宅ローンが「住宅資金貸付債権」であること(民事再生法196条3号)
個人の保証人が代位弁済して住宅ローン債権を取得したものでないこと(民事再生法198条1項本文かっこ書き)
住宅に別除権(特別の先取特権・質権・抵当権・商事留置権)が存しないこと(民事再生法198条1項ただし書き前段、53条1項)
住宅以外の不動産にも住宅ローンが設定されている場合は、その不動産に後順位担保権がついていないこと(民事再生法198条1項ただし書き後段、196条3号)
保証会社が住宅資金貸付債権の保証債務を履行した場合は、保証債務の全部を履行した日から6か月を超えていないこと(民事再生法198条2項)

 

このように様々な要件があるのを見ると、住宅ローン特則はなかなか認められないようにも思えます。しかし、新築のマンションや一軒家を住宅ローンで購入、買った家に抵当権を設定し、その家に住んでいるという一般的な場面では、多くの場合住宅ローン特則を使って自宅を残すことが認められています。ただ、状況によっては、民事再生法上の要件を満たすかが問題となることがあるため、上記の①~⑥について少し詳しく見ていきます。

対象となる建物が「住宅」であること(民事再生法196条1号)

(1)民事再生法の条文

住宅ローン特則を使うためには、建物が住宅である必要があります。住宅ローン特則は、生活の本拠である自宅を守るためのものですので、当然必要になる要件です。

住宅ローン特則が使える住宅とは、「個人である再生債務者が所有し、自己の居住の用に供する建物であって、その床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるもの」を指します。また、「当該建物が2以上ある場合には、これらの建物のうち、再生債務者が主として居住の用に供する1の建物に限る」とされています(民事再生法196条1号)。以下、民事再生法の条文にあげられた要件について見ていきます。

(2)所有

住宅ローン特則の対象になる住宅は、個人再生する人が所有している建物です。単独所有の場合だけでなく、共有の場合も含まれます。

(3)自己の居住の用に供する建物

住宅ローン特則は住宅ローン付きの自宅を守るためのものであるため、自身が住んでいることが基本的に必要になります。この要件が問題になるのは、以下のような場合です。

 

ア 事業用物件

建物の全てを事業用で使っている場合は、要件を満たしません。

イ 他人に賃貸している場合

他人に賃貸している場合は、要件を満たしません。しかし、転勤等の一時的な事情のために建物を賃貸していて、転勤等の事情がなくなればその建物に居住する予定があるのであれば、要件を満たします。

ウ 離婚後、自身は住んでおらず、元妻と子が住んでいる場合

離婚後、自身は住んでおらず、元妻と子が住んでいる場合は、要件を満たしません。しかし、元妻と子が住んでいるのは転居するまでの一時的なもので、転居後自身が居住する予定があるのであれば、要件を満たします。

(4)床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるもの

この要件は、店舗兼住宅の場合や、二世帯住宅の場合に問題になりますが、床面積の2分の1以上が自己の居住用であれば、要件を満たします。

(5)当該建物が2以上ある場合には、再生債務者が主として居住の用に供する1の建物に限る

住宅資金特別条項は、個人再生する人が主として居住の用に供する1つの建物にしか定めることができません。住宅資金特別条項は、債権者平等の例外を定めるものであるため、例外を認める必要性が乏しい場合にまで認めるべきではないところ、生活の本拠以外の建物についてまで例外を認める必要性が乏しいことから、定められた要件です。

対象となる住宅ローンが「住宅資金貸付債権」であること(民事再生法196条3号)

住宅ローン特則を使うためには、住宅ローンが、「住宅資金貸付債権」である必要があります。民事再生法上、住宅資金貸付債権とは、「住宅の建設若しくは購入に必要な資金(住宅の用に供する土地又は借地権の取得に必要な資金を含む。)又は住宅の改良に必要な資金の貸付けに係る分割払の定めのある再生債権であって、当該債権又は当該債権に係る債務の保証人(保証を業とする者に限る。以下「保証会社」という。)の主たる債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているもの」をいいます。

この要件を満たすか問題になるのは、住宅ローンの一部が以下のような不動産取得等以外の目的に使われている場合です。

No 不動産取得等以外の目的に使われている場合の具体例
住宅取得時の諸費用にも使われている場合
住宅を買い替え、買替前の住宅ローン返済にも使われている場合
ソーラーパネルの設置費用にも使われている場合
自動車の購入資金にも使われている場合

 

このように、住宅ローンの一部が不動産取得等以外の目的に使われている場合は、使途や流用割合を考慮して、住宅資金貸付債権であるかが判断されます。ただ、具体的な判断基準は明確ではありません。例えば、2500万円の住宅ローンを借り入れ、500万円を自動車購入資金に使ったという場合は、住宅ローン特則は使えないと言われることがありますが、割合や金額がどの程度低くなれば要件を満たすかは明らかではありません。

住宅ローン特則を使いたいものの、不動産取得以外にも住宅ローンの一部を利用している場合、確実に住宅ローン特則を使えるわけではなく、自宅を失ってしまう可能性があることに留意が必要と言えます。

個人の保証人が代位弁済して住宅ローン債権を取得したものでないこと(民事再生法198条1項本文かっこ書き)

先述の通り、住宅ローン特則を使うためには、住宅ローンが「住宅資金貸付債権」である必要があります。住宅資金貸付債権であれば基本的に住宅資金特別条項を定めることができますが、住宅資金貸付債権であっても、個人の保証人が代位弁済して取得したものである場合は、住宅資金特別条項を定めることができません(民事再生法198条1項本文かっこ書き)。

この規定の趣旨は、以下の点にあります。

・個人の保証人等が保証債務を履行することにより住宅資金貸付債権を代位取得した場合、保証人等は再生する人に対し一括の弁済を求めることができる

・ところが、仮に住宅資金特別条項の対象として長期分割弁済が認められると、保証人に大きな不利益を与えてしまう

・そのため、本規定により、個人の保証人が代位弁済した場合は住宅ローン特則の対象外とする

ただし、現在の住宅ローンの実務上、保証会社による保証を受けることが一般的な融資条件になっていて、個人の保証人が必要になることはあまりありません。そのため、この規定が問題になるケースは多くありません。後述の通り、保証人が保証会社である場合は本規定の適用外で、巻戻しによる住宅ローン特則が認められる可能性があります。

住宅に別除権(特別の先取特権・質権・抵当権・商事留置権)が存しないこと(民事再生法198条1項ただし書き前段、53条1項)

(1)条文の要件と具体例

住宅ローン特則を使うためには、住宅に別除権(特別の先取特権・質権・抵当権・商事留置権)が存しないことが必要です。よく問題になるのは、以下のようなものです。

No 問題となる具体例
住宅ローン以外のカードローン等について、住宅に第2順位の抵当権が設定されている場合
ペアローンが設定されている場合
マンション管理費・修繕積立金の滞納がある場合

(2)住宅ローン以外のカードローン等について、住宅に第2順位の抵当権が設定されている場合

この場合、民事再生法198条1項ただし書き前段の要件に該当しますので、住宅ローン特則は使えません。再生申立てする人以外が、第三者弁済するなどして抵当権を抹消すれば住宅ローン特則を使えますが、そのようなことができるケースは経験的にあまりありません。

(3)ペアローンが設定されている場合

ペアローンとは、例えば夫婦がそれぞれれ別の住宅ローン借入・抵当権設定をし、その合算で住宅を購入するというものです。この場合も、夫婦それぞれから見ると、住宅に別の抵当権が設定されていますので、民事再生法198条1項ただし書き前段に該当してしまいます。

ただ、民事再生法198条1項ただし書きの趣旨は、別の担保権が実行されると住宅資金特別条項が無意味になってしまうことを回避することにあります。この点、同一家計の夫婦であれば、一方だけが支払いを遅滞して、抵当権が実行されることは考えづらく、民事再生法198条1項ただし書きが想定している場面とは異なると言えます。

そのため、実際の運用として、大阪地裁では、同一家計を営んでいる者が、いずれも住宅ローン特則付き個人再生申立をする場合には、住宅ローン特則の利用が認められています。

(4)マンション管理費・修繕積立金の滞納がある場合

マンション管理組合は、管理費・修繕積立金について、債務者の区分所有権と建物に備え付けた動産の上に特別の先取特権を有しています(建物の区分所有等に関する法律7条1項)。そのため、マンション管理費・修繕積立金の滞納があると、民事再生法198条1項ただし書き前段に該当し、住宅ローン特則は使えません。

そのため、マンションについて住宅ローン特則を使うには、マンション管理費・修繕積立金の滞納がないことが必要です。

住宅以外の不動産にも住宅ローンが設定されている場合は、その不動産に後順位担保権がついていないこと(民事再生法198条1項ただし書き後段、196条3号)

この要件の趣旨はなかなか分かりにくいと思われるため割愛しますが、住宅ローン特則を使う場合に、住宅以外の不動産にも住宅ローンが設定されている場合は、その不動産に後順位担保権がついていないか確認する必要があります。

保証会社が住宅資金貸付債権の保証債務を履行した場合は、保証債務の全部を履行した日から6か月を超えていないこと(民事再生法198条2項、巻戻し)

保証会社が住宅ローンを代位弁済していたとしても、代位弁済から6か月以内に個人再生を申し立てれば、住宅ローン特則の利用が認められます。これを巻戻しといいます。

ただ、一般的に住宅ローンは優先的に支払いがされていると思われることや、住宅ローンを6か月以上滞納しないと代位弁済されないことから、代位弁済される場合は、経済状態は相当悪化しており、個人再生になじみにくいことがほとんどです。また、代位弁済から6か月以内の申立というのも、現実的には難しいと言わざるを得ません。

そのため、住宅ローンの代位弁済が行われた場合に巻戻しを利用することは少なく、自己破産で対応することがほとんどになると思われます。

住宅ローンの支払遅滞について

住宅ローンの支払遅滞があっても住宅ローン特則の利用は可能です。これは、住宅ローンの代位弁済に至っている場合でも、厳格な要件のもととは言え、制度上住宅ローン特則の利用が認められていることから分かります。

ただ、先ほど記載した通り、一般的に住宅ローンは優先的に支払いがされていると思われます。また、弁護士に個人再生を依頼すれば、住宅ローン以外の借金の支払いを一時的に止めることができますので、実際に個人再生を申し立てるまでの間に住宅ローンの遅滞を解消することも可能です。

それにもかかわらず、個人再生申立までに住宅ローンの遅滞が解消していないとなると、そもそも、弁済を続けていけるかどうかという問題になり、個人再生が不認可になる可能性があります(民事再生法174条2項2号)。そのため、住宅ローン特則を利用する際は、住宅ローンの遅滞を解消しておくことが重要です。

弁護士によるまとめ

以上、個人再生における住宅ローン特則について解説しました。自宅を手放すことなく債務整理をしたいという方は、住宅ローン特則付き個人再生が選択肢になります。みお綜合法律事務所では、住宅ローン特則付き個人再生の申立を数多く行っていますので、ご相談にお越しいただければと思います。
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