個人の借金問題
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借金問題解決コラム

更新日:2023年5月1日

個人再生の財産額基準の考え方

このコラムを書いた弁護士
弁護士 羽賀 倫樹(はが ともき)

大阪生まれの奈良育ち。夏の高校野球観戦が楽しみです。お互いのことを何一つ知らないご依頼者と弁護士が、少しずつ距離を縮めながら、人生の一大事の解決に向かうわけですから、ていねいにお話しをうかがって心を開いていただくことの大切さを痛感しています。

はじめに

借金の返済が苦しくなって個人再生を行うと借金が圧縮されますが、手持ちの財産額を下回ることは出来ません(民事再生法174条2項4号、財産額基準・清算価値保障原則)。そのため、個人再生をする際は、どのような財産があり、どれだけの価値があるかを明らかにする必要があります。

このページでは、個人再生での返済額算定の基準となる財産にどのようなものがあるかの点と、どのように価値を評価するかについて見ていきます。

個人再生で評価の対象となる財産

個人再生で評価の対象となる財産にはあらゆるものが含まれますが、代表的なものをあげると以下の通りです。

① 現金

② 預貯金(普通預金・定期預金)

③ 保険(生命保険・火災保険等)

④ 積立金(社内積立・財形貯蓄等)

⑤ 賃借保証金・敷金

⑥ 貸付金・求償金・売掛金等

⑦ 退職金

⑧ 不動産(土地・建物・借地権付建物)

⑨ 自動車

⑩ 動産類(貴金属・着物・パソコン等)

⑪ 株式・会員権等

⑫ 過払金

以下、それぞれの評価方法等について見ていきます。なお、当事務所で申立することが多い大阪地方裁判所の運用を前提に記載しますが、大阪地方裁判所以外では運用が異なることがあります。

財産の評価方法

(1)現金

現金は当然財産になりますが、個人再生手続では、現金は99万円までは財産に計上しない扱いになっています。これは、自己破産の場合、現金は99万円まで手元に残せることを考慮した取扱いです(本来的自由財産、破産法34条3項1号・民事執行法131条3号・民事執行法施行令1条)。

(2)預貯金(普通預金・定期預金)

ア 普通預金

預貯金のうち普通預金は、財布代わりとして利用されている実態があることから、現金と同視して取り扱われています。したがって、現金+普通預貯金で99万円までは、財産に計上されません。

イ 定期預金

預貯金のうち定期預金は、普通預金と異なり、財布代わりとして利用されているとは言えないため、額面が財産として扱われます。

(3)保険(生命保険・火災保険等)

生命保険や火災保険に解約返戻金があれば、額面が財産として扱われます。

契約者貸付を受けている場合は、貸付分を控除した解約返戻金の残額が財産として扱われます。例えば、解約返戻金が100万円ある生命保険について、70万円の契約者貸付を受けている場合は、30万円だけが財産として扱われます。

(4)積立金(社内積立・財形貯蓄等)

社内積立・財形貯蓄等がある場合、額面が財産として扱われます。

(5)賃借保証金・敷金

賃借保証金・敷金のうち、居住用物件の敷金返還請求権は、敷金の額から滞納賃料を控除し、さらに原状回復費用等を考慮し60万円を控除した金額が財産として扱われます。居住用物件で60万円を超える敷金が必要になるケースはあまりないと考えられるため、敷金はほとんどの場合財産として計上されていないのが実態です。なお、滞納賃料は敷金から控除できますが、賃料の滞納があるとそもそも個人再生が認められるのかの問題が生じますので、注意が必要です。

自動車や家財保管のための、駐車場やトランクルームの敷金は、上記の60万円控除のルールは適用されません。

事業用不動産の敷金の場合は、敷金の額から滞納賃料と原状回復費用相当額を引いた金額が財産となります。居住用物件の敷金と異なり、簡易な控除は認められません。

(6)貸付金・求償金・売掛金等

個人再生をする人が、他の人にお金を貸していたり、保証債務を支払って主債務者に対する求償権を有しているときは、貸付金・求償金が財産になります。貸付金は、取締役の役員貸付けが問題になることもあります。

貸付金や求償金について、現に少しずつでも支払いがあるのであれば、額面が財産になることがあります。一方、貸付先の人が破産をしていたり、行方不明であるなどで回収できる見込みがないときは、財産価値は0円になります。

(7)退職金

退職金は、自己都合退職した場合の額面の8分の1が財産として扱われます。大幅に減価されていますが、その理由は以下の通りです。

No 退職金が減額評価される理由
退職金は4分の3が差押禁止財産であり、債権者としては残り4分の1だけを前提に回収を考える必要があること(民事執行法152条2項)
実際に退職していない場合、退職時までに勤務先が倒産したり、懲戒解雇で退職金が不支給になる可能性があるなど、退職金は不確実な財産であること

 

ただし、すでに退職して未支給の場合や、近く退職予定の場合は、②の理由は当てはまりづらいため、支給や退職までの期間等を考慮して、最大で額面の4分の1が財産として扱われます。

額面の4分の1となると、退職金の財産価値が上がって再生における返済額が上がる可能性があります。また、退職して収入が下がる場合には、そもそも再生が認められるかの問題が生じる可能性があります。

一方、退職金の中でも、確定拠出年金は全額が差押禁止財産であるため、財産として計上されません(確定拠出年金法32条1項本文)。確定給付企業年金・中退共も同様に、財産として計上されません(確定給付企業年金法34条1項本文、中小企業退職金共済法20条1項本文)。

(8)不動産(土地・建物・借地権付建物)

不動産は、時価から5%を控除した金額から、住宅ローン等の被担保債権の金額を差し引いた額が財産として扱われます。

住宅ローンを組んでから時間が経過して、住宅ローン残高が少なくなっている場合は、不動産の価値が大きくなり、再生で支払うべき金額が大きくなることがあるため、注意が必要です。

(9)自動車

自動車は、以下の場合、原則として価値がないものとして扱われます。

No 自動車が価値がないものとして扱われる場合
国産自動車で初年度登録から7年以上経過している場合
軽自動車で初年度登録から5年以上経過している場合

 

一方、外国産自動車や新車価格が300万円以上の場合、時価額が財産として扱われます。

(10)動産類(貴金属・着物・パソコン等)

動産類で10万円以上の価値があるものは、時価額が財産として扱われます。現実的には、動産類で10万円以上の価値があるものというのはあまりないと思われます。

(11)株式・会員権等

株式や会員権は、時価額が財産として扱われます。従業員持ち株も同様です。

(12)過払金

過払金は、実際に回収した金額から、回収のための弁護士費用を控除した金額が財産として扱われます。

再生の直前に現金化された場合

財産の評価方法については以上の通りですが、評価方法が財産によって異なる点が財産評価の上で問題になることがあります。具体的には、現金の場合99万円までは財産として扱われないことから、個人再生を行う直前に、財産が現金化された場合どのように取り扱われるか問題になります。

仮に、100万円の自動車と100万円の保険解約返戻金がある場合、財産価値は200万円になり、再生で最低限支払うべき金額は200万円になります。一方、個人再生の直前に解約返戻金を現金化した場合、100万円の自動車と100万円の現金がある状態になります。この現金のうち99万円が財産として扱われないとなると、財産価値は101万円となり、再生で最低限支払うべき金額は101万円になります。

ただ、以上のように考えると、直前に財産を現金化した方が再生する人にとって有利になり、債権者に不利益な状態になります。そこで、再生の直前に財産が現金化された場合、現金化される前の状態の財産があるものとみなして財産価値が算定されます。上記の例では、解約返戻金を直前に現金化した場合でも、財産価値は200万円になり、再生で最低限支払うべき金額は200万円になります。

有用の資への利用(弁護士費用等)

(1)弁護士費用への利用

個人再生では、申立の直前に、手持ちの財産を生活上有用なものに使った場合、直前現金化と異なり、使った分は財産が減ったものとして扱うことができます。例えば、上記の例で、現金化した解約返戻金のうち、45万円を弁護士費用に充てた場合、財産価値は155万円になり、再生で最低限支払うべき金額は155万円になります。

財産額が減ることで、再生で支払うべき金額が下がる可能性があります。また、申立のための弁護士費用支払いが早期に完了し、早い時期に申立が可能になります。そのため、財産がある場合に、財産を現金化して弁護士費用に充てるのは非常に有用な方法と言えます。財産価値で再生における弁済額が決まる場合には、特に有用と言えます。

(2)転居費用・医療費への利用

弁護士費用に以外に有用の資として認められる可能性があるものとして、転居費用・医療費があげられます。

転居費用は、通常数十万円程度かかりますので、多くの場合有用の資として認められると思われます。医療費は、家族の入院のために十万円から数十万円程度の費用が必要になったという場合であれば、有用の資として認められると思われます。

(3)日常生活費に利用しても財産の減額は認められない

自己破産の場合、財産を日常生活費に充てたという理由で財産が減っても問題なく、日常生活費に使い減少した財産を前提に財産額が算定されます。

一方、個人再生は、実際の収入から日常生活費を出すことが前提で、財産を取り崩すことは想定されていません。そのため、日常生活費に充てたという理由で計上する財産額を減らすことは認められず、仮に日常生活費に充てたという場合は元通りの財産があるものとして財産額が算定されます。

弁護士によるまとめ

以上、個人再生において評価の対象になる財産、評価方法について見てきました。様々な評価方法があり、複雑な計算になりますので、どの程度の財産額になり、それが再生における返済額に影響するかについて、弁護士に依頼して手続きを進めていく中で明らかにしていくことが必須と言えます。
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