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借金問題解決コラム

更新日:2023年4月7日

給与所得者等再生と小規模個人再生の違い

このコラムを書いた弁護士
弁護士 羽賀 倫樹(はが ともき)

大阪生まれの奈良育ち。夏の高校野球観戦が楽しみです。お互いのことを何一つ知らないご依頼者と弁護士が、少しずつ距離を縮めながら、人生の一大事の解決に向かうわけですから、ていねいにお話しをうかがって心を開いていただくことの大切さを痛感しています。

このコラムの解説内容

個人再生は、細かく分類すると小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があります。このうち、小規模個人再生が認められるための要件は、下記のページに記載しました。

関連コラム:個人再生が認められるための要件 >

このページでは、もう一つの個人再生の方法である給与所得者等再生が認められるための要件について、小規模個人再生と比較しながら見ていきます。また、どちらの手続きがよく使われているのかの点と、その理由についても記載します。

給与所得者等再生と小規模個人再生の違い

給与所得者等再生を小規模個人再生と比較した場合の特徴は、以下の①~⑤の通りです。

No 給与所得者等再生の特徴(小規模個人再生と比較した場合)
収入に関する要件が加重されていること(民事再生法239条1項)
債権者の決議はなく、意見聴取のみであること(民事再生法240条)
再生後支払うべき金額が大きくなる可能性があること(民事再生法241条2項7号・3項)
申立前7年間で、給与所得者等再生・破産手続き上の免責が認められていた場合、給与所得者等再生は認められない(民事再生法239条5項2号)
給与所得者等再生が認められてから7年間は、破産手続きにおける免責が原則認められない(破産法252条10号ロ)

 

収入に関する要件が加重されていること(民事再生法239条1項)

(1)収入に関する民事再生法の要件

小規模個人再生では、収入について、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあることが求められています(民事再生法221条1項)。

これに対し、給与所得者等再生では、収入について、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあることに加え、給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれることが求められます(民事再生法239条1項)。収入が継続・反復しているだけでなく、定期性・安定性が必要になります。

(2)収入の定期性(給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがあること)

給与所得者等再生は、もともとは、その名称の通り、毎月の給料(給与所得)がある会社員等を対象として設けられた手続きです。個人事業主の利用はあまり想定されていないと言えますが、個人事業主であっても安定した大口取引先があるなど、収入に定期性・安定性がある場合には、「給与に類する定期的な収入を得る見込みがある」として、給与所得者等再生が認められる可能性があります。ただ、一般的には、個人事業主の場合、収入が定期ではなく安定しづらいため、給与所得者等再生を利用するのが難しいことが多いと言えます。

(3)収入の安定性(その額の変動の幅が小さいと見込まれること)

収入の安定性については、過去2年間に年収換算で5分の1未満の変動であれば要件を満たすと考えられています。これは、民事再生法241条2項7号イで、過去2年間で収入に5分の1以上の変動が生じた場合には、変動後の収入額が弁済額算定の基準になっていることから導かれます。

5分の1以上の変動がある場合でも、変動した後の収入が安定していると見込まれるのであれば、安定性の要件を満たすと考えられます。

債権者の決議はなく、意見聴取のみであること(民事再生法240条)

小規模個人再生では、債務の圧縮が認められるかは債権者の決議により決まります。例えば、借金の額の過半数を占める債権者が反対した場合、債務の圧縮は認められません(民事再生法230条6項)。

これに対し、給与所得者等再生では、債務の圧縮を認めるかについて債権者の決議はなく、債権者には意見を述べることだけが認められています(民事再生法240条)。ここで債権者が述べることができる意見は、民事再生法上の給与所得者等再生の要件を満たすかどうかについての意見になります。借金の過半数を占める債権者が債務の圧縮に反対であったとしても、債権者の決議がないため、債権者の意向により債務の圧縮が認められないという事態は生じません。そのため、この点で、給与所得者等再生は小規模個人再生より債務者にとって有利な手続きと言えます

再生後支払うべき金額が大きくなる可能性があること(民事再生法241条2項7号・3項)

小規模個人再生では、債務の圧縮について、①債務額基準(民事再生法231条2項3号・4号)、②財産額基準(174条2項4号)で決まる金額のうち、いずれか大きい額まで圧縮可能と定められています。

これに対し、給与所得者等再生では、債務の圧縮について、上記①②に加え、③可処分所得基準も加えた3つの基準で最も大きい金額まで圧縮可能と定められています(民事再生法241条2項7号・3項)。この可処分所得基準の算定式は、(Ⅰ年収-Ⅱ所得税-Ⅲ住民税-Ⅳ社会保険料-Ⅴ最低生活費)×2というものです。この最低生活費は、生活保護基準を基に低額の設定になっていますので、2年分の可処分所得という基準で算定される額は、①債務額基準、②財産額基準より高くなることが多く、給与所得者等再生の方が支払うべき金額が大きくなることが多いと言えます。可処分所得基準が少額であっても、給与所得者等再生の方が小規模個人再生より返済額が少なくなることはありません。

そのため、この点で、給与所得者等再生は小規模個人再生より債務者にとって不利な手続きと言えます

申立前7年間で、給与所得者等再生・破産手続き上の免責が認められていた場合、給与所得者等再生は認められない(民事再生法239条5項2号)

給与所得者等再生は、債権者の意思を考慮せず借金を圧縮する手続きであるため、近い時期に同じく債権者の意思を考慮せず借金を減免する手続きが行われていた場合には、利用を認めるべきではないとの考えに基づいて設けられた規定です。

ただ、一度再生・破産をした場合、信用情報の問題から5年~10年程度借入が困難になります。そのため、現実的には、7年以内に再生申立てがされることはあまり考えられません。したがって、この要件が問題となり、給与所得者等再生が認められないケースは少ないと思われます。

給与所得者等再生が認められてから7年間は、破産手続きにおける免責が原則認められない(破産法252条10号ロ)

上記と同じ趣旨で、債権者の意思を考慮せず借金の減額が認められた場合に、近い時期に借金の免除を認めるべきではないという考えに基づいて設けられた規定です。

上記と同じく、一度再生をした場合、信用情報の問題から5年~10年程度借入が困難になるため、この要件が問題となり、免責が認められないケースは少ないと思われます。

給与所得者等再生の利用実態とその理由

ここまで給与所得者等再生について見てきましたが、実際に使われているのは、大半が小規模個人再生です。具体的には、2017年~2021年までの5年間で、全国で申し立てられた個人再生のうち、小規模個人再生が93.6%(58,180件)、給与所得者等再生が6.4%(3,999件)となっています(令和3年司法統計年報概要版 1民事・行政編(令和4年 最高裁判所事務総局))。

なぜ、小規模個人再生の方が利用されているのでしょうか。これは、既に記載した小規模個人再生と給与所得者等再生の特徴が影響しています。

小規模個人再生について、給与所得者等再生と比較した場合に債務者に有利と言えるのは、借金がより大幅に圧縮できることが多い点です。小規模個人再生の方が給与所得者等再生より返済額が大きくなることはありません。小規模個人再生は、給与所得者等再生と違って、手間のかかる可処分所得基準での計算が不要であるため、手続き負担も軽いと言えます。

一方、給与所得者等再生について、小規模個人再生と比較した場合に債務者に有利と言えるのは、債権者が反対したとしても債務の圧縮が認められる点です。ただ、消費者金融・クレジットカード会社・銀行の保証会社・債権回収会社等の主要な債権者は、個人再生に反対することはあまりなく、給与所得者等再生のメリットが生かされる事案は限定されます。

以上から、ほとんどの事案で、借金がより大幅に圧縮できる可能性が高く、手続き負担も軽い小規模個人再生が使われています。例外的に、債権者の反対により小規模個人再生が認められない可能性があるか、実際に債権者の反対で小規模個人再生が認められなかった案件に限って、給与所得者等再生が使われているものと思われます。

当事務所で個人再生をお受けする場合も、90%以上は小規模個人再生を申し立てています。そして、債権者の反対により小規模個人再生が認められない見込みか、実際に認められなかった場合に限って、給与所得者等再生を申し立てています。

弁護士によるまとめ

・給与所得者等再生は、小規模個人再生より借金の圧縮幅が小さいことが多く、手続き負担も重い。

・給与所得者等再生のメリットは、債権者が反対しても借金を圧縮できること。

・ただ、債権者が反対することは少ないため、給与所得者等再生より小規模個人再生が使われることが多い。
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