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借金問題解決コラム

更新日:2023年7月8日

ローンが残っている自動車の個人再生における取扱い

このコラムを書いた弁護士
弁護士 羽賀 倫樹(はが ともき)

大阪生まれの奈良育ち。夏の高校野球観戦が楽しみです。お互いのことを何一つ知らないご依頼者と弁護士が、少しずつ距離を縮めながら、人生の一大事の解決に向かうわけですから、ていねいにお話しをうかがって心を開いていただくことの大切さを痛感しています。

はじめに

個人再生は、自己破産と異なり、財産の価値に関わらず、担保のついていない財産を残すことが可能です。
そのため個人再生をした場合でも、自動車を一括払いで購入した場合や、ローンを組んで自動車を購入した後でローンを完済したという場合、自動車は残すことができます。

一方、自動車についてローンが残っている場合、個人再生をすると自動車を残せないことがあります。このページでは、自動車をローンで購入した場合の担保権の内容や、どのような場合に自動車を残せて、どのような場合に自動車が残せないかについて見ていきます。

自動車をローンで購入した場合の担保権(所有権留保)

ローンで購入した自動車に対し設定される担保権を、所有権留保といいます。所有権留保とは、自動車ローンの支払いの担保のため、ローンで購入した車の所有権をローン会社や販売店に留保するものです。所有権留保が設定されていると、ローンの支払いが滞った際、自動車は引き上げ・売却され、売却代金はローン残高に充当されてしまいます。

車のローンが残っている状態で個人再生をする場合、所有権留保に基づき自動車が引き上げられるかは、①契約書に所有権留保か定められているか、②自動車ローン債権者が所有権留保を個人再生手続きで主張できるか(所有権留保の第三者対抗要件を満たしているか)によって決まります。以下、①②について検討しますが、②の第三者対抗要件の内容は、普通自動車と軽自動車で異なるため、②は普通自動車と軽自動車に分けて検討します。

契約書に所有権留保が定められているか

個人再生手続きで所有権留保に基づき自動車が引き上げられるのは、契約書に所有権留保が定められている場合に限られます。ローンで自動車を購入しているのであれば、当然所有権留保が定められているようにも思えますが、全ての自動車ローンで所有権留保が定められているわけではありません。

例えば、銀行の自動車ローンの場合、所有権留保が定められていないのが一般的です。そのため、銀行の自動車ローンを組んでいる場合、自動車が引き上げられないことがよくあります。一方、自動車メーカー系列の販売店(ディーラー)が提携している信販会社によるローンの場合、所有権留保が定められているのが一般的です。そのため、ディーラー提携ローンの場合、所有権留保の第三者対抗要件を満たす場合には、自動車が引き上げられることになります。

いずれにしても、所有権留保が定められているかについては、契約書の中身を確認することが必要です。

普通自動車の場合の第三者対抗要件

契約書で所有権留保が定められている場合に、自動車ローン債権者が所有権留保を個人再生手続きで主張するには、第三者対抗要件を満たす必要があります。普通自動車(軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車以外の自動車)の場合、所有権留保の第三者対抗要件は、自動車登録ファイルへの登録です(道路運送車両法5条1項、4条)。実務的には、車検証の所有者欄の記載によって以下のように考えられています。

 

No 所有権留保の第三者対抗要件を満たすかについて
車検証の所有者欄がローン会社であれば、所有権留保の第三者対抗要件を満たす(自動車は引き上げられる)
車検証の所有者欄が再生をする人になっていれば、所有権留保の第三者対抗要件は満たさない(自動車は引き上げられない)
車検証の所有者欄が販売店である場合、所有権留保の第三者対抗要件を満たすかは契約書の詳細の確認が必要(自動車が引き上げられるかは契約書の内容による)

 

③の車検証の所有者欄が販売店である場合、例えば、以下のようなケースであれば所有権留保に基づき自動車が引き上げられます(最高裁判所平成29年12月7日第一小法廷判決 民集第71巻10号1925頁)。

車検証の所有者欄が販売店である場合で自動車が引き上げられるケース
  • 販売店から購入者に対する売買代金を担保するために、販売店に自動車の所有権が留保されている
  • 信販会社が購入者の販売店に対する売買代金債務を連帯保証している
  • 信販会社が保証債務の履行として販売店に売買代金残額を支払った場合には、民法の規定に基づき、信販会社は当然に販売店に代位して売買代金債権及び本件留保所有権を行使することができるとの条項がある

一方、以下のようなケースであれば、自動車は引き上げられません(最高裁判所平成22年6月4日第二小法廷判決 民集第64巻4号1107頁)。

車検証の所有者欄が販売店である場合で自動車が引き上げられないケース
  •  信販会社が購入者の販売店に対する売買代金債務を立替払いしている
  •  信販会社が販売店に売買代金債務を立替払いした場合は、販売店に留保されている自動車の所有権が信販会社に移転し、売買代金相当額と信販会社の手数料額を加算した金額を完済するまで信販会社に所有権が留保されるとの条項がある

 

上記2つの最高裁判例の判示内容からすると、車検証の所有者欄が販売店である場合、①契約書上、販売店に所有権が留保されているか、信販会社に所有権が留保されているか、②被担保債権に売買代金債権以外のものが含まれているかが、自動車が引き上げられるかにあたっての重要な要素になると考えられます。

このように、ローンで購入した自動車が普通自動車の場合、個人再生をすると引き上げの対象になるかは、契約書の内容から判断していく必要があります。

軽自動車の場合の第三者対抗要件

軽自動車の場合、所有権留保の第三者対抗要件は、普通自動車と異なり、自動車登録ファイルへの登録ではなく(道路運送車両法5条1項、4条)、引渡しです(民法178条)。この引渡しには、占有改定が含まれます(民法183条)。

専門用語になりますが、占有改定とは、「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示」することを言います(民法183条)。ローンが組まれた自動車の場合、購入者が実際には占有している自動車について、ローン会社のために占有するとの条項が契約書に定められているかが問題になります。

この点、契約書に所有権留保の条項と占有改定の明示規定があれば、軽自動車は引き上げられます。また、占有改定の明示規定がなくても、自動車の使用・保管についての買主の善管注意義務条項、転貸・貸与・改造・毀損等の禁止条項、買主が割賦代金の支払いをしない場合には自動車の保管場所を明らかにするとともに自動車を引き渡す旨の条項があるなど、当該契約書の条項全体及び当該契約を行った当時の状況等を当事者の達成しようとする目的に照らして、総合的に考察して判断すると占有改定が認められる場合も、軽自動車は引き上げられます(名古屋地裁平成27年2月17日判決 金融法務事情2028号89頁)。

そして、信販会社が締結している一般的な所有権留保条項の場合は、上記のような占有改定を前提とする条項が定められているため、占有改定が認められ、第三者対抗要件は満たされます。そのため、ローンで購入した自動車が軽自動車の場合、契約書に所有権留保が定められているのであれば、個人再生をすると自動車は基本的に引き上げられることになります。

自動車引き上げの損得について

個人再生をして自動車引き上げになることのデメリットは、自動車が使えなくなることです。逆に、自動車が引き上げにならなければ、そのまま自動車を使えるのがメリットになります。

しかし、自動車が引き上げられないことには、デメリットもあります。具体的には、引き上げられなかった自動車の価値が財産額に上乗せされ、再生における弁済額が大きくなるという問題が発生する可能性があります。この点を以下の具体例をもとに考えてみます。

 

≪具体例≫
  • 自動車ローン以外の債務が500万円
  • 自動車ローンが150万円
  • 生命保険の解約返戻金が80万円
  • 自動車の価値が100万円

 

以上の状況で、自動車が引き上げられた場合、総債務額は、自動車ローン以外500万円+自動車ローン150万円-自動車ローンに充当される自動車の価値100万円=550万円になります。財産額は解約返戻金のみで80万円になります。そうすると、個人再生では、総債務額550万円の5分の1の110万円と、財産額80万円のうち、高い方である110万円を支払う必要があります。

一方、自動車が引き上げられない場合、総債務額は、自動車ローン以外500万円+自動車ローン150万円になります。財産額は、解約返戻金80万円+自動車100万円=180万円になります。そうすると、個人再生では総債務額650万円の5分の1の130万円と、財産額180万円のうち、高い方である180万円を支払う必要があります。

このように、自動車が引き上げられない場合、個人再生における弁済額が大きくなる可能性があるため、注意が必要です。

自動車の利用のために取りうる手段

自動車が引き上げられそうなケースでは、様々な方法で、自動車利用を継続できる場合もあります。

例えば、そのままでは個人再生で自動車が引き上げられる状況であっても、親族等の援助で自動車ローンを完済できれば、自動車は引き上げられません。

また、個人再生をするとローンは組めなくなりますが、自動車の一括購入は可能であるため、手頃な値段の自動車を一括払いで購入して、自動車の利用を継続される方がいらっしゃいます。また、一括払いが困難な場合には、レンタカーを利用すれば、問題なく自動車の利用を継続できます。

なお、任意整理であれば、自動車ローンを外して手続きができるため、自動車を残すことができます。ただし、任意整理は債務の圧縮ができないため、十分な収支の余剰があることが必要です。

弁護士によるまとめ

以上、個人再生をした場合のローンが残っている自動車の取扱いについて見てきました。自動車が残せるかは専門的な判断が必要で、場合によっては相談のみでの判断は困難で、実際に個人再生の手続きに入ってみないと分からないというケースもあります。ただ、自動車を残せないとしても、個人再生で債務を大幅に圧縮できれば、自動車を失うこと以上のメリットがあるケースは多いと言えます。

自動車ローンも含めて支払いが厳しくなってきたという方は、弁護士に債務整理の相談をすることをお勧めします。
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