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借金問題解決コラム

更新日:2023年9月9日

自己破産における免責不許可事由

このコラムを書いた弁護士
弁護士 羽賀 倫樹(はが ともき)

大阪生まれの奈良育ち。夏の高校野球観戦が楽しみです。お互いのことを何一つ知らないご依頼者と弁護士が、少しずつ距離を縮めながら、人生の一大事の解決に向かうわけですから、ていねいにお話しをうかがって心を開いていただくことの大切さを痛感しています。

このコラムの要点(目次)

はじめに

借金の返済が厳しくなったときに利用できる自己破産は、簡単に言うと借金を0にするための手続きです(※)。

※ 厳密に言うと破産というのは、借金をしている人が支払不能状態であることを確認し、財産の調査・換価・配当を行うための手続きで、借金を0にするための手続きは免責手続きと言います。

 

ただ、借金を0にすると債権者に大きな不利益が生じるため、すべてのケースで借金を帳消しにすることが認められるわけではありません。法的には、免責不許可事由がある場合に、免責が認められないことがあります。ここでは、自己破産における免責不許可事由について見ていきます。

免責不許可事由の概要

破産法では、以下の事由が免責不許可事由と定められています(破産法252条1項)

 

No 破産法に定められた免責不許可事由
債権者を害する目的で、破産財団に属し、または属すべき財産の隠匿・損壊・債権者に不利益な処分・その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、または信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的または他の債権者を害する目的で、担保の供与または債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、またはその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
浪費・賭博・その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担したこと。
破産手続開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
業務及び財産の状況に関する帳簿・書類・その他の物件を隠滅・偽造・変造したこと。
虚偽の債権者名簿を提出したこと。
破産手続において裁判所が行う調査において、説明拒否・虚偽説明をしたこと。
不正の手段により、破産管財人・保全管理人・破産管財人代理・保全管理人代理の職務を妨害したこと。
前回の破産の際の免責許可の決定が確定してから、7年以内に免責許可の申立があったこと等。
破産法40条1項1号(説明義務)・41条(重要財産開示義務)・250条2項(免責調査への協力義務)に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。

 

 

以上のように、破産法では様々な事由が免責不許可事由と定められています。以下、それぞれの免責不許可事由について、少し詳しく見ていきます。

免責不許可事由の詳細

債権者を害する目的で、破産財団に属し、または属すべき財産の隠匿・損壊・債権者に不利益な処分・その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと(破産法252条1項1号)

債権者を害する目的をもって、財産の発見を不能・困難にしたり(隠匿)、財産を物理的に損壊したり、廉価売却・贈与等の不利益処分を行った場合を指します。この規定の要件は厳格ですが、破産法265条の詐欺破産罪に該当する行為を含むものであり、免責不許可事由の程度としては重大なものと言えます。

破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、または信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと(破産法252条1項2号)

出資法の上限金利を超える利率での借入や、クレジットカードで買った商品の著しい廉価売却(クレジットカード現金化)を行った場合を指します。

クレジットカード現金化には、新幹線チケットを購入して中古チケットやで売却するようなケースや、現金化を行っている業者から安い商品を高額で購入し、購入特典として業者から現金のキャッシュバックを受けるようなケースが考えられます。クレジットカード現金化は、キャッシングの支払が厳しくなった人が、当座の支払いに充てるために手を出してしまっていることがあります。

破産手続の開始を遅延させる目的については、債務負担をしたときに、支払不能の状態にあることと、破産をする人が支払不能の事実を認識していることが必要です。

特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的または他の債権者を害する目的で、担保の供与または債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、またはその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと(破産法252条1項3号)

偏頗弁済(へんぱべんさい)と言われるものです。個人の自己破産では、銀行や貸金業者への支払を止めているのに、親戚・知り合いなど個人からの借入についてのみ、手持ち財産から前倒しで返済をしたようなケースが考えられます。

浪費・賭博・その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担したこと(252条1項4号)

⑴ 自己破産と浪費等の免責不許可事由

浪費・賭博・射幸行為による著しい財産減少・過大な債務負担は、個人の自己破産において最も多く見られる免責不許可事由と思われます。浪費等が原因で借金が膨らんだ場合、自己破産をするか、免責不許可事由の問題が生じない個人再生をするかという形で問題となるケースがよくあります。

浪費に当たりうるケースは、概ね1回2万円以上の飲酒飲食、自動車・電器製品・貴金属・衣服等で10万円以上の商品購入、趣味や有料サイトの高額利用等があります。

賭博は、競馬・競輪・競艇・パチンコ・パチスロ・賭け麻雀・宝くじ等があります。

射幸行為とは、投機を目的とする証券取引や商品取引のことで、株式取引・バイナリーオプション・先物取引・FX・仮想通貨取引等があります。

浪費等の免責不許可事由では、浪費等があったことに加え、著しい財産減少や過大な債務負担があることが要件になっています。「著しい」「過大な」というのは、一律で判断されるものではなく、破産する人の個別の経済状態・職業などから総合的に判断されます。

浪費等の時期については、弁護士依頼前の浪費等も問題になりますが、弁護士依頼後の浪費等、さらには裁判所申立後の浪費等があると、より免責不許可になりやすくなります。したがって、弁護士に破産手続きを依頼した後は、浪費・賭博・射幸行為を止めることが必須です。

 ⑵ 個人再生と浪費等の免責不許可事由の関係

個人再生では浪費等の免責不許可事由の制度がないため、破産における免責不許可事由の問題を回避するために、個人再生を選択することがあります。

この点、弁護士依頼前の浪費等は、自己破産と違って個人再生の手続きにおいて問題視されることはほぼありません。しかし、弁護士依頼後の浪費等、さらには裁判所申立後の浪費等があると、履行可能性の問題(民事再生法174条2項2号)が生じたり、浪費等で使ってしまった金額を財産額に上乗せして個人再生における弁済額が大きくなるなどの問題(民事再生法174条2項4号)が生じる可能性があります。

したがって、自己破産ではなく個人再生を選択する場合でも、弁護士に個人再生手続きを依頼した後は、浪費・賭博・射幸行為を止めることが必須です。

破産手続開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと(破産法252条1項5号)

破産をする人が、支払不能の状態であることを認識しながら、負債や収入について嘘の申告をして借入をしたような場合を指します。支払不能の状態であることを認識しつつ、借入先に申告せず借入をしたようなケースも、具体的な状況によってはここの要件に該当することが考えられます。ただ、支払不能になっている人は、銀行や貸金業者からの借入を継続的に行っているのが通常であるため、不告知の全てが詐術に該当するわけではないと考えられます。

業務及び財産の状況に関する帳簿・書類・その他の物件を隠滅・偽造・変造したこと(破産法252条1項6号)

会社員・主婦・年金生活・無職の方の場合、業務に関する帳簿等はないため、財産の状況に関する帳簿等(家計簿等)の隠匿・偽造・変造が問題となります。

虚偽の債権者名簿を提出したこと(破産法252条1項7号)

破産をする際は、債権者一覧表を提出する必要がありますが、その内容に虚偽があると免責不許可事由になります。虚偽の債権者一覧表を提出した場合、債権者一覧表に記載した借金について免責が認められても、債権者一覧表に記載しなかった借金については、免責されません(破産法253条1項6号)。

破産手続において裁判所が行う調査において、説明拒否・虚偽説明をしたこと(破産法252条1項8号)

裁判所における審尋期日で説明拒否や虚偽説明をした場合や、正当な理由なく期日に出頭しない場合、この免責不許可事由に該当します。また、破産申立書・債権者一覧表・財産目録・報告書・家計収支表等の中に事実と異なる記載がある場合は、この免責不許可事由に該当する可能性があります。

不正の手段により、破産管財人・保全管理人・破産管財人代理・保全管理人代理の職務を妨害したこと(破産法252条1項9号)

破産管財手続きの際に選任される破産管財人等の職務を妨害した場合に、免責不許可事由になることが定められています。

大阪地裁では、個人の自己破産申立の場合、破産管財人が選任されない同時廃止になる方が多い運用になっています。同時廃止では、この免責不許可事由が問題になることはありません。

前回の破産の際の免責許可の決定が確定してから、7年以内に免責許可の申立があったこと等(破産法252条1項10号)

短期間のうちに、再度の借金の免責を認めるとモラルハザードを引き起こすことから、7年間は免責を認めないとする規定です。給与所得者等再生(民事再生法239条1項)、ハードシップ免責(民事再生法235条1項)では、債権者の多数の同意なしに借金の一部免責が認められていて、破産における免責と共通するため、給与所得者等再生における再生計画を遂行した人、ハードシップ免責を受けた人も同様に7年間は免責が認められません。

ただし、免責等を受けた人は信用情報に掲載されているため(ブラックリストに載っているため)、免責後新たな借入をするのは困難です。そのため、この要件が問題となって免責が認められないケースは多くないと思われます。

破産法40条1項1号(説明義務)・41条(重要財産開示義務)・250条2項(免責調査への協力義務)に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと(破産法252条1項11号)

破産をする人には、破産手続き上、説明義務・重要財産開示義務・免責調査への協力義務などがあります。これらの義務に反した場合には、免責不許可事由に該当することになります。

破産法252条1項6号・7号・8号と、この11号の規定から、弁護士に破産手続きを依頼した場合、弁護士からの質問にはありのまま答えていただき、裁判所に対する説明が事実と異なる内容にならないことや、破産管財人との面談や裁判所の期日には確実に出頭していただくことが重要と言えます。

裁量免責

以上のように、破産法上様々な免責不許可事由が定められています。ただ、「破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる」(破産法252条2項)との規定があり、免責不許可事由に該当する場合でも、免責が認められることがあります。免責不許可事由に該当するものの免責が認められる場合を、裁量免責と言います。

例えば、浪費の免責不許可事由に該当する場合に裁量免責が認められるかは、浪費の額・期間をもとにして、浪費の具体的内容・時期、浪費以外の破産原因の有無、債権者が受けた被害の程度・回復の程度・債権者の意見、破産する人の反省状況・生活状況・将来の見通し等を総合考慮することになります。実際の事案では、浪費等の免責不許可事由に該当すること以外に、説明義務違反など破産手続きにおける問題があるかどうかが重視されている事案が多いと思われます。

免責不許可事由がある場合の手続き

免責不許可事由がある場合、その程度に応じて様々な手続きが必要になります。大阪地裁では、①申立書への記載、②反省文や生活再建策の提出、③免責審尋への出頭、④破産管財人選任、⑤裁量免責のための積立等が必要になる可能性があります。

免責不許可事由があると、免責に問題が生じるか、免責を受けられるとしても破産管財人や裁判所による慎重な審査が必要になることが考えられるため、注意が必要です。

弁護士によるまとめ

以上、自己破産における免責不許可事由について見てきました。

個人の自己破産でよく聞く免責不許可事由は、浪費・クレジットカード現金化です。この点、浪費やクレジットカード現金化がわずかな額であれば、他に説明義務違反等がなければ免責に問題が生じることはあまりないと言えます。しかし、借入・債務のほとんどが浪費・クレジットカード現金化によるものである場合には、免責に問題が生じるか、免責を受けられるとしても破産管財人や裁判所による慎重な審査が必要になる可能性があります。

免責不許可事由がある場合には、自己破産ではなく個人再生で借金問題の解決を図ることもあります。どのような方針で進めるのがいいかについては、弁護士に相談して決定することをお勧めします。
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