Yさんの借入れ先はクレジットカード会社と銀行でした。低収入の非正規雇用の身でありながら、月々の返済金は18万円にも達していました。医療費は月によって少ないこともありますが、奨学金のほうは決まった金額が待ったなしに差し引かれます。一定の猶予期間を過ぎると延滞金が加わるため、さらに高額の返済を迫られることになり、このまま借金を続けても奨学金を返すことは自分には無理と感じて相談に来られました。
返すアテのない高額の借金と化した奨学金を抱えて路頭に迷うより自己破産して人生の再設計を。
奨学金を得て大学に進んだYさんは、予想外の事態が起きて返済不能に。奨学金返済のための借金を重ねて生活破綻に陥りましたが、思い切って自己破産することで人生を再スタートさせることができました。
ご相談者様
職業 |
会社員 |
---|---|
借入先 |
奨学金 |
奨学金 |
700万円 |
住所 |
京都府 |
Yさんは大学進学の際、両親の収入が不安であったことから奨学金を申請。申込みに当たって必要な保証制度としては機関保証を利用しました。卒業後は、毎月の給料の中から決められた返済額を返還していましたが、しばらくして体調を壊して勤務を続けられなくなり、退社を余儀なくされました。それからというものは職を転々とし、経済的に苦しい生活を続けていました。不安定な収入では毎月かさむ医療費と奨学金を支払うことができず、仕方なくカードで借入れするようになりました。それでも病気の体を押して仕事を続けて返済に充てていたYさんでしたが、切り詰めるのにも限度があり、困窮生活は限界に達していました。
ご相談時の借金状況
解決までの道のり
Yさんはまだ30代でしたが、これまでの経緯を伺い、経済的にも精神的にも追いつめられておられる現状をみるにつけ、本人の希望でもある自己破産が最もふさわしいと考えました。あとは申立てに向けて手続きを進めるだけでした。
奨学金返済のための借入れという経緯に問題がなかったこと、奨学金は親族による保証ではなく保証会社による機関保証であったこと、債務を圧縮しても支払える見通しがなかったことから、破産手続きを進める際に特に問題発生しませんでした。申立から手続き終了までが比較的簡易な「同時廃止」手続きが認められ、また、免責も得られて、Yさんは長く苦しめられてきた奨学金返済から解放されました。
Yさんの資産状況を調べた結果、債務を圧縮しても支払える見通しがなかったことから、個人再生での再起は不可能と判断し、残る債務整理方法として自己破産を検討しました。
奨学金が払えなくなって自己破産を申請する場合、気をつけないといけないのが保証人制度です。運営元の日本学生支援機構は、貸倒れ防止のために保証人制度を設けています。本人が支払えなくなると保証人に返済義務が生じます。保証人が親や親族の場合は、保証人が代わって返済せねばならず、簡単に自己破産させてもらえないという仕組みになっているのです。
この点に関してYさんは、両親を保証人にせず、保証会社による機関保証制度を利用していました。経済的に余裕のない両親が返還義務を負わされることになるのを避けたいと考えたからです。結果的にこの予測は当たり、Yさんは奨学金の返済ができなくなりましたが、両親は保証人になっていなかったので請求が及ぶことはありませんでした。代わって返済する人がいないということで、自己破産の申立てに問題は生じませんでした。
担当弁護士のまとめ
大学の学費等を奨学金でまかなったものの、その後支払いが苦しくなり相談に来られる方が多くおられます。奨学金は、親族による保証が付いている場合、保証人の方に迷惑がかかるため、手続き選択の幅が狭くなりがちですが、Yさんのように機関保証であれば保証人への迷惑を考える必要はありません。機関保証は、保証料が必要になりますが、万が一支払ができなくなった時のことを考えると、奨学金借入の際に検討すべき選択肢といえます。
Yさんは、奨学金も含めて破産することで借金問題から解放されました。奨学金等の支払いが苦しくなってきたという方は、悩みを抱え込まず、早めにご相談いただければと思います。